第1話 崩壊の前兆
都市バリロラ
サルバ大陸は王国であるサルバと、四つの都市で形成されている。バリロラはその一つ。
ここバリロラでは15歳になるとアルセール学園へ入学し学園では三年間、剣や魔法、学問を学ぶことが義務付けられている。
アリウスはそのアルセールに昨年入学した。現在二年であるアリウスは剣、魔法、学問どれをとっても好成績を収めている。
「おはようアリウス!」
肩まである金髪で、人懐っこい笑みを浮かべあいさつしてきたのは、幼馴染のソフィー。ソフィーは家が近所ということもあり幼少期からの付き合いで親同士も仲がいい、いつも一緒に遊んできた活発で親しみやすい女の子だ。
「おはようソフィ、今日も朝から元気だな」
「そうかな?でもアリウスが元気ないだけじゃない?」
「だとしてもソフィーは元気すぎる思うな」
そう俺たちの会話に入ってきたのはもう一人の幼馴染ゼノビア。茶色い長く伸びた髪をなびかせクスリと笑う。ソフィーとは違いクールな性格だが正義感が強くやんちゃな男子相手にでもひるむことがない。そのためクラスでは委員長をしており女子のファンも多い。
「ゼノビアまでそんなこと言う!」
いわれたソフィは納得がいってないようだったかすぐ切り替え挨拶する。
「おはようゼノビア!」
俺もそれに続く
「おはようゼノビア」
「おはよう二人とも」
挨拶を交わした俺達は雑談をしながら教室へと入る。教室へ入ると俺たちに挨拶をしてくる男子がいた。
「やぁ、三人ともおはよう!」
この金髪碧眼で顔立ちのいい男子はクリフ、この町有数の貴族であるバーグ家の長男で学年成績総合一位。誰に対しても分け隔てなく接する好青年で、先生、生徒からの信頼も厚い。
「「「おはよう」」」
「今日も三人は仲良いね」
そう、羨ましいそうに言うクリフにソフィは笑顔で答える。
「私達は昔からの付き合いだからね!」
「幼馴染というやつだね、羨ましいよ」
「クリフ君は昔からの友達はいないのかい?君なら大勢いそうだけど」
俺と同じ疑問をゼノビアが聞いた。
確かにこの学園におけるクリフへの信頼は相当なものだ。生徒のみならず先生からも慕われるクリフに昔から仲のいい友達がいても何も不思議ではないからだ。
「今は平気だけど僕は昔病弱だったんだ、だからほとんど家から出ることができなかったから、必然的に友達はいなかったよ」
思いもよらない過去を聞き慌ててゼノビアが謝罪をする。
「すまない、君にとってあまりいい過去ではないだろうに無神経に聞いてしまった」
「かまわないよ、つらかったことだけではなかったし、今は何ともないからね」
クリフは何ともないように笑顔で答える。
「お前ら席につけ」
そう声をかけて入ってきた中年の小太りな男性は、俺達の担任であるモラン先生だ。古くから学園に努め学園でも発言力が強い。
今日も連絡事項などを淡々と話すのを俺は話半分で聞いていく。
いつもと同じ、一日の始まり
「よし、今日はここまで解散」
モラン先生の挨拶が終わり、クラスは次第に騒がしくなっていく。帰り支度を済ませるとソフィとゼノビアの二人が俺の席まで来た。
「アリウス今日は一緒に帰れる?」
入学から登下校は基本的に三人一緒だった、放課後は俺が個人的にトレーニングしていることが多かったから一緒に帰れない日も少なくない。だから帰り際にソフィが聞いてくるのは日課だった。
「うん、帰れるよ」
二人とも学園屈指の美少女だから最初は男子からの視線が気になっていたが、最近では何とも思わなくなってきた。
三人で談笑しながら帰っているとクリフと数人の男子が学園の裏手へと歩いていくのを視界にとらえた。
「(あっちには何もなかったはずだけど…)」
クリフと一緒に歩いているのは学園でも優等生で通っているメンバーだったので、特に気にすることもないと思ったが、あまりいい雰囲気ではないと感じ取り後をつけてみようと思った。
「すまんふたりとも、忘れ物したから先帰っていてくれ」
「全くアリウスは偶に抜けているところがあるな、それじゃソフィに何も言えないぞ」
「確かにソフィに何も言えないのは癪だな」
「とんだとばっちりだ!」
「それじゃ戻るわ、また明日な」
「「また明日」」
そうして俺は走りだした。
「すみません!すぐ返しますから!もう少しだけ待ってください!」
「ローマン君前も同じこと言ってたけど反省してるの?」
「明日には必ず返しますから!」
「だから、信用できないってクリフさんは言ってんだよ!オラ!」
ドカッ
「ぐはっ」
暴力を受けてうずくまるローマン
「じゃあ、そのブレスレットを渡してくれ、それで今月分はチャラにしてあげるよ」
「待ってください!これは母親の形見なんです!これだけは!」
「君僕のおかげで父親が働けてるって知ってるよね?」
「はい…でも、それはもともとクリフさんが…」
「あぁ??お前クリフさんのせいって言いたいのかよ?」
取り巻きの男子は気に入らないのかローマンのお腹にけりを入れる
ドカッ
「うっ」
「とりあえずこのブレスレットはもらっていくから」
「待ってください!本当にそれだけは!」
無理やりブレスレットを奪うクリフに縋るローマン
「おい!クリフさんから手を放せ!」
「邪魔だ!」
アリウスが喧騒のする方に向かうとそこには、取り巻き二人から蹴られても放そうとしないローマンにクリフが手を前に出し魔法を唱えようとしているところだった。
「(何やってんだあいつは!)」
アリウスは駆け出しクリフに殴りかかる
「殺す気か!」
殴られたクリフを見た取り巻きはアリウスを止めにかかる
「お前、何やってんだ!」
「クリフさんから離れろ!」
取り巻きを振りほどきローマンに気を配るアリウス
「おい、お前大丈夫か?」
「はい…」
それを聞きアリウスはクリフ達へと向きなおす。
「お前ら大勢で一人を襲うなんて何考えてやがる!それにクリフさっきの魔法明らかに人に使っていいものじゃないだろ!!」
立ち上がったクリフは悪びれることもなく口を開いた。
「なにか問題があるかい?」
その言葉に俺は驚愕した、こいつはさっき殺せるほどの魔法を打とうとしていたのに、それに対してなにも気にしていない、まるで殺しても問題ないというように。
「イカれてるな」
「なんとでも言えばいい、それに君僕たちの邪魔したんだ容赦しないよ?」
「構わねぇよ、お前らに媚びうるほど人間捨てちゃいないんでな」
「ふーん、それじゃ手加減要らないね」
そういい、取り巻きとクリフは今にも襲い掛かかかろうとしたとき
「何をやってるお前たち!!」
モラン先生が現れた、そして現れるな否やクリフは
「助けてください!アリウス君がローマン君に暴力をふるっているんです!」
「なっ!?」
「それはホントか貴様!」
「違います!虐めてたのはクリフで!」
「違います!僕は虐めてなんかいません!そうだよねローマン君」
ローマンはここでアリウスを庇った場合自分と父は生きていけると到底思えなかった。
「はい…」
「おい!?」
「やっぱりそうか!アリウス貴様は学園長室についれていく!!」
「待ってください!あいつは脅されてます!」
「黙れ!!これだけ証人がいるんだもう言い逃れできないぞ!!」
もうこれ以上騒いでも変わらないと思ったアリウスは諦めてモラン先生の後ろを歩くのだった
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