第9話

 オヤジを相手に毒づきながら、布オムツが、ネットで売れるものかと、思案している自分がいる。以前から使わない物が、狭いアパートのクローゼットを占拠しているのが目障りだった。ただ、母親が購入したものを無下に売ってしまうのも娘としてどうよ、と思っていた。

 不思議なもので、オヤジの後押しのおかげで、吹っ切れた。善は急げ、というわけで、美沙のお昼寝タイムに布オムツを売りに出すことにした。

「いいか、決して欲張るな。」

オヤジは、スマホをいじっている私の横にいて、付きっきりでかまってくる。

「相場の七割でいこうかな……」

「駄目だ、欲張るなって。半額にしろ。未使用であることをアピールしろよ。それから、全部まとめて買ってもらえ。」

「オヤジさあ、今になってかまってくれるんだね。どうせなら、小学校の自由研究、手伝って欲しかったね。」

「そうか…それは悪かったな…」

「どしたの?うわ!その殊勝な物言い、気持ちわる!」

そう言いながら、ビニール包装をあけていない布オムツの写真を撮り、一瞬で売りに出した。

「美沙のミルク代の足しになるかな…」

「お前の物を買えよ。化粧品とかどうだ?疲れた顔をしてるじゃないか。その…なんだ…口紅とかどうだ。顔色がよくなるんじゃないか?」

私は思わず苦笑した。

「あのさ、私、化粧しない人なの。なぜだかわかる?」

「なぜだ?」

「オヤジ、教えてあげるよ。私、お化粧しているお母さんが大嫌いだったの。」

「どういうことだ?」

「あの人、お勤めするようになってからさ、やたら化粧品とか洋服とかにお金かけるようになってさ。ありのままの自分に自信がないのかよって、子供心に軽蔑してたわけ。会社の皆んながきれいにしているからって、張り合ってさ。そこまで必要かってくらい、洋服とかアクセサリーとか、化粧品、買ってたよ。今から思えば、買い物依存症気味だったんじゃない?あっ、オヤジはロクに家にいなかったから知らないか?」

「頭、痛い…」

「これくらいで何さ。私の話し、聞くんだろう?」



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