第7話
「眠い……」
「僕も眠い……」
次の朝、夫と二人で、「眠い」を連発したが、夫は仕事、私は家事、大人たるもの、やるべきことが山ほどある。
「みーちゃんはいいなあ。好きなだけ寝て、好きな時に起きて騒いで…女王様だね…そうだ、カオリン、美沙のお風呂、僕が帰って来てから二人でいれよう。お風呂上がりの方がよく寝てくれるよね。カオリンが頑張ってお風呂にいれてくれるのはありがたいけど、昨日みたいに変な時間に起きてしまったら二人とも辛いよ…」
「そうだね。悪いけど、そうする…まーくん、寝不足だから、気をつけて…」
夫を送り出して、洗濯をしながら、朝ご飯の食器を洗っていると、
「カオリンか……さすが、理系くんだ。俺が娘につけた名前の意味をわかってくれているではないか…」
オヤジの声がした。横にオヤジが立っている。思わずイラッとしたが、今朝は怒鳴る元気はない。
「オヤジ、美沙の寝顔だけ、見にくるんだったら、お断りだからね。それからさ、言っとくけど、私に鉱物の名前なんか、つけないで欲しかったね。」
私の香織という名前はオヤジがカオリナイトという鉱物から名付けたと聞いている。
「カオリナイトの名は中国の有名な粘土の産地、江西省景徳鎮の付近の高嶺(カオリン)に由来する。写真で見るとただの白い石だが、陶磁器、医薬品など、幅広く役に立つものだって、まーくんから聞いた。」
「おおっ!なんて素晴らしいムコ殿!」
「オヤジの馬鹿!そういうことは、あんた自身が私に話して聞かせることだろうが!」
「怒鳴る元気が出てきたではないか。よかったよかった。いやあ、ものわかりのいいムコ殿だ。そうだ、風呂くらい手伝ってもらえ。全部、お前が抱え込むことはない。」
「まさか……オヤジ、あんた、わざと美沙を起こしたね。」
「起こすなんて人聞きの悪い……美沙の耳元でささやいただけだ……ただし、俺の声は聞こえない。美沙は耳がくすぐったかったかもしれないな……」
カチンときて、思わずオヤジの胸ぐらをつかんだ。ところが、つかんだつもりが手応えがない。
「幽霊だからな。そういうことだ。」
「くそっ!」
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