第2話
そこにいるのは確かにオヤジだ。いや違う。そんなはずはない。オヤジは私が高校生の時に事故で亡くなっているのだ。えっ?これは夢か?自分の頬を叩いてみる。痛い、夢じゃない。
「おいおい、オヤジはないだろう。もう反抗期の娘じゃないんだから。久しぶりだなあ。」
オヤジはニヤニヤ笑っている。それが酷く癇に障った。
「オヤジ!よくもまあ、私の前に化けて出てくれたね!あんた、親らしいことは何一つしてないでしょうが!」
オヤジは黙っている。
「あんた、年がら年中、岩石だの火山だのって、フィールドワークに出かけてさ、お母さんも私も放ったらかしだったよね。おじいちゃんとおばあちゃんがいたからいいってもんじゃないんだよ。あの二人はお母さんにとっては舅、姑なんだからね。あんたが好き勝手している間にお母さん、病んじゃったんだから。」
「お母さんは生きてるぞ。おじいちゃんとおばあちゃんはこちらに来たけど…あっ、それから地学ではフィールドワークではなくて、巡検という。お前も地学を学ぶ者の娘ならそれくらいは知っておいてほしいのだが…」
「オヤジの馬鹿野郎!お母さんはあんたのせいで、心を病んだってこと。ほんと、わかってないね。」
「それは申し訳ないが…」
「謝ってすむ話しじゃないからね。あんたの顔なんて二度と見たくなかったよ。何さ、着物なんか着てカッコつけて!」
「いや、これはお母さんが着せてくれて……ほら、お葬式の時に…」
「そうだった?オヤジの葬式のことなんて忘れたね。十年以上たっているんだから。フン!あれから後、大変だったんだからね。」
心なしか、オヤジが悲しそうな顔をしている。さすがに言い過ぎたかと思った。ただ、一度噴き出した怒りは簡単にはおさまらなかった。
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