第7話
母のいいところは、さっぱりとした気性で、合理的に物事を考えるところだ。本来なら、気分が悪くなる話なのだろうが、私は、意外にも、冷静に聞いている。
「土地が売れたら、お金が入るでしょ。その時に人の心がわかるのよ。」
「ママ、何かあったの?」
「勝代さんがさ、怒鳴り込んできたわよ。」
勝代さん?自分の母親と一緒になって、ひいばあちゃんをいじめた人だ。
「自分もしっかり財産をもらっているのを棚に上げて、『あんた達はズルイ!』って。」
「えっ?意味わかんない。」
「勝代さん達は、農地としていいところを、根こそぎ自分達のものにしたの。おじいちゃんは家を相続する代わりに、畑としてはイマイチなところを押し付けられたんだけど、そこを買いたいって言ってくれる人がいたの。」
「へえ~、人の運命って不思議だね。」
「土地が売れて、兄さんだけじゃなくて、私まで医大に入ったでしょ。まあ、根っこにあるのは僻みだね。色々と言われて頭にきてさ、私が勝代さんに言ってやった。『立派な医者になって、おばさんのお腹をきってさしあげますよ!』って。普通は、身内の手術はしないんだけどさ、まあ、啖呵を切ったからには、有言実行、外科医になったってわけ。」
母はまた笑った。
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