第6話

「おじいちゃん、そのあとどうしたの?」

「おじいちゃん、お勤めしたの。お茶を作っている工場に。おばあちゃんも農協でパートしたり、お茶つみのアルバイトしたり。」

「大変だったよね。」

「まあね。私も兄さんも思春期、親が大変すぎるものだから、ぐれてる場合じゃなかったわ。」

「じゃあさ、どうしてママと伯父さん、お医者さんになれたの?」

「畑が売れたのよ。おじいちゃんが辛うじて相続することができたところがね。それで、医大に行かせてもらったの。」

「すごい。ドラマみたいじゃん。」

「おじいちゃん、農家の長男だからって、大学に行かせてもらえなかったの。だからこそお前達は仕込んでやる。その代わり、ご先祖様から受け継いだ土地を売ったお金を使う以上、いい加減なことは許さないって。兄さんがすかさず、『医者になります。人のためになる仕事ですから、ご先祖様に申し訳が立ちます。』って。負けずに『私もなります!』って言ってしまって…でも後悔してないよ。」

母が屈託なく笑った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る