第5話
「じゃあ、ママが話してよ。」
「えっ!何を?」
「そうだなあ、知ってること、全部。」
「どうしてまた?あの家の昔話なんて、聞いたら気分悪くなるよ。」
「上手く言えないんだけど、ひいばあちゃんの話に適当に相づちうってるだけでさ、本当にそれでいいのかなあって思ったんだ。」
心なしか、ママが優しく笑ったように見えた。
「ひいおばあちゃんは苦労の多い人だったって聞いてる。嫁いびりがひどかったらしいけど、姑さんがわりと早くに亡くなったのと、意地の悪い小姑さん達はお嫁に行って、一応、解決した。本当に大変だったのは、ひいおじいちゃんが自分の父親より先になくなったことだと思うよ。人間、死ぬ順番が違うと大変なことになるの。」
「どういうこと?」
「長男で、しかも農業を継いでいるひいおじいちゃんが受け継ぐはずの田んぼや畑、普通に考えるなら、おじいちゃんが代わりにもらって当たり前でしょう。その頃は、おじいちゃんもおばあちゃんと結婚して、農業で生活していたんだから。私も今のあなたぐらいの年だったかな。」
「そうなんだ。」
「でも、ひいおじいちゃんのお父さんが亡くなったあと、ひいおじいちゃんの妹さん達に大部分の土地をとられたらしいよ。ひいおばあちゃんが体が弱くて戦力にならないから、農業を続けられないだろうって言われて。法律では自分達も相続する権利があるからって。自分のせいでおじいちゃんが少しの畑しか相続できなかったって、ひいおばあちゃん、気に病んでるのよね。」
私はどう言っていいのか、困り果てた。ただ、曾祖母が祖父に遠慮していることに合点がいった。
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