第8話
母はふと真顔になり、
「女ってさ、悲しいねえ……」
と言った。
「えっ?ママが言う?」
「私はね、自分はラッキーだったと思うよ。もしも畑が売れていなかったら、どうしてただろうね。勝代さんのことは大嫌いだけどね、ただね、勝代さんにも事情があったらしいよ。」
「どんな?」
「勝代さんのご主人って人が、欲深い人でさ、実家からしっかり財産をもらわなかったら離婚するって言ったらしいよ。」
「ひどい!まるで財産目当ての結婚じゃないん!」
「そういうことになるねえ。」
私は黙って頷いた。
「ねえ、志織。志を持って生きてよね。それだけでいいからさ。」
「わかってる。名前の意味は小さい時から何回も聞いたもん。」
「私ね、自分の子供の名前はこだわったんだよ。自分の名前、素直な子になるように直子でしょ。やってらんない!」
「素直って、悪い言葉じゃないけど?」
「やだね。何でも言うことを聞けって言われてるみたいでさ。だから自分の子供にはもっと素敵な名前をつけるって決めてた。」
「何かを司る人になるように『司』、人の要になるように『要』、でもお兄ちゃん達、名前に負けてるよ。あっ、私もそっか…」
母と二人で笑ってしまった。
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