第2話 両切ピース

今日の相手はもう3回ほどヤっている相手、

つまるところセフレというやつだ。

名前はリリと名乗っているので実際の名前は知らない。

顔も可愛いし愛想があっていい娘だ。


ふぅ、

彼女お気に入りのホテルは景色が良くて煙草の吸心地もいい。

「また椎名君煙草吸ってる〜」

リリが俺の頬を突きながらそう言ってくる。

「リリちゃんだって吸うじゃん」

そう言って俺は煙草を一本渡して火を移す。

3回のセックスの内に出来たルーティンだった。

「やっぱりさ、私にゃあ依存するものがないといかんのですよ」

そう言って笑って煙草を吸う姿は綺麗だった。

 「リリちゃん、この後もう一回戦しよ」

「お、がっつくね、いいよ」

街には手を繋いで歩くカップルが居た。

こんなセックスまみれの自分とはかけ離れた純愛だ。

「リリちゃんはさ、本命の相手とかいんの?」

俺がそう聞くとリリちゃんは突然笑い出した。

「なーに、真面目な顔で言ってんの!

 私にそんな相手いないわ!まあ強いていうなら酒と煙草!」

そう言って手元の缶チューハイをあおった。

喉からグビグビといい音が鳴った後、その缶を俺の頬に押し当てて言った。

 「なによ、椎名君には本命いるの?いたら承知しないからね」

「いないいない、リリちゃんといっしょ」

そう言いつつ俺は今、リリちゃんとしっかりとお付き合いしたいと考えていた。

今日のHめっちゃよかったし、なんだかんだリリちゃんとは身体以外も相性がいいと思うからワンチャンある。

「どうしたの椎名君、ボーっとしちゃって、さっきの質問といいどうかした  

 の?」

リリちゃんはまたしても俺の頬を突く。

「あの、リリちゃん、急でごめんなんだけどさ、俺達ちゃんとお付き合いしてみ

 ない?」

リリちゃんは缶チューハイを飲み干し、煙草を一吸いして俯いた。

自分のものと思えないほど心臓がうるさく動いていた。

「あー、ごめん、私さ、そういう相手は作んないって決めてんの。

 いやね、椎名君はめっちゃいい子なんだけどさ、

 そういう関係になると絶対私は椎名君のこと傷つけちゃうんだよ。

 椎名君のことは大好き、でもごめんね」

そう言ってリリちゃんは俺の首に手を回してキスをした。


俺達はそのままホテルを出て別れた。

その日俺は普段飲まない缶チューハイと両切ピースという煙草を買った。

それ以来リリちゃんと会うことはなかった。


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〈両切ピースとは〉

タール28mg ニコチン2.3mg 、50本入り¥1100、日本一強烈

(らしい)煙草の銘柄(作者調べ)

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