第2話 合うようで合わない幼馴染

幽霊や心霊現象を直接体験したいと思う俺。

一口に恐怖体験といっても内容は様々で、 

ジャパニーズホラーの代名詞である怨霊や地縛霊、チャ○キーやアナ○ル人形等の憑依現象、簡単なもので言えば電気が勝手に消えたり物が動いたりするポルターガイスト等、俺が知りたい事は山のようにあった。


それは幼馴染のタイキも同じだった。

彼は俺以上にそういった心霊やオカルトといったものに非常な興味を抱く男だった。


だが、俺とは違う点が一つあった。


彼は幽霊や怨霊といったモノと直接対話して曖昧な定義といったものを全てクリアにしたいと思う俺とは違い、理不尽に呪われたり何か危害を加えられるといった現象に酷く腹を立て、どちらかと言えば対話ではなく封殺する事を目標にしているのだ。彼は口癖のように言う。


「アイツら何がしたいねん。」


…俺の回想の中でさえも鮮明に再生されるコッテコテの関西弁はさておき


それは確かにそうだ。彼は幽霊特有の理不尽というものが特に許せないようだ。

だが俺と彼は不思議体験をしたいという願望は一致していても、私はメカニズムを知りたいと思い、彼は有無を言わさず殲滅したいと叫ぶ。

まるでその内心は違っていた。


しかし、こんなカルトな話を信じる友人など少なく、まして幽霊というものは信じていても決して接触など試みようと思う人間は皆無だった。



そこでついに俺たちは2人でこの世に流れている伝承や都市伝説、怪談、怪奇現象等を片っ端から調べて接触していく事にしたのだ。


今日はその活動を始める前に下準備として書物を読み漁る約束をした。



俺達は街の外れにある古い図書館で待ち合わせをしていた。スマホやインターネットが普及した今日では最早いにしえの建物扱いなのかもしれない。それが証拠に俺達が子供の頃に通っていた図書館の面影はまるで無い。あの頃はまだまだ紙の本の需要が高い頃で、施設の中は様々な年代の人々でごった返していた。


それが今や客の1人も居ないのだ。入口付近の花壇はまるで人の手が入っておらず雑草だらけで、建物自体も少し汚れている。そんな姿を見ていると、少し悲しくなってくるのだ。


進化したテクノロジーは確かに人類を豊かにしたかもしれないが、人知れず影になっていく文化もこうして存在しているのだ。


俺はしんみりしながら彼を待つ。 


程なくして彼が来た。


「懐かしなぁ。えらい汚なってもうて。」

彼は思った事を包み隠さず言うのだ。

面白いからいいのだけど。


「おせぇぞタイキ。早速中に入ろう。」


「ホンマにやんのかぁ?勉強みたいで俺は進まんけどなぁ。」


「今日はとりあえず調べんだよ。不思議体験なんてそんな軽く見つかる訳ねぇんだから。」


不満そうにしてる彼を無理矢理中へ連れ込む。

中へ入るとやはり利用者はいないがスタッフはキチンといた。若そうなアルバイトの娘がひとりだが。


俺達は心霊オカルトコーナーに一直線で向かう。するとそのアルバイトの娘が駆け寄ってきて俺達に声をかけてきた。


「あの、オカルトとか心霊はお好きですか?」


突然の質問に俺達は一瞬固まったがタイキが返す。


「好きではないな。俺はそういうの全部壊して回りたいってくらいやから。興味はあるけどな。コイツは好きやで多分。」


珍しい興味の持ち方をしている彼を見てその娘は何故か嬉しそうにしている。


「あの、嬉しそうですけど、何かありましたか?」


「それがですね、最近妙な本を館長が見つけて来まして、それが来てからうちの図書館で怪奇現象が起こるようになったんです…」


こんな偶然があるか。まさに俺達が夢にまで見た怪奇現象にこんな最短ルートで出会えるとは。 感動しているとタイキが鼻息を荒くして言う。


「よっしゃ。じゃあその本燃やしたろk」  


言い終わる前に彼の頭を叩いて俺は言う。


「バカか!!何のために俺達が怪奇現象探してんのか忘れたのか!!…とにかくお姉さん、その話詳しく聞かせて貰えますか。」


思考回路が最速で破壊の2文字しか導くことの出来ないバカをいなしながら裏方倉庫に入る事になった。




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