叶の夢
家の中で薄暗い部屋で静かに過ごした。
学校も休みになった。
別に家で過ごすようにと言われた訳ではなかった。
でも家から出る気分になれなかった。
そういう日々が1週間続いた。
「たまには散歩でも行くか?」
ソファに寝転ぶ私にお父さんが声を掛けた。
「…行こうかな。」
久し振りにお父さんと2人で出掛けた。
昔遊びに来た公園。
時々本を借りに行った図書館の前を過ぎ、お父さんと私は来た道を戻った。
「…こんな時に言うのもあれなんだけどさあ。」
お父さんがそんなことを言い出した。
「何?」
「お父さんとお母さん、叶には自分の夢を叶える大人になってほしいと思ってる。」
「夢か…」
「何かないの?」
「1個あるよ。」
「どんな夢?お父さんに教えてよ。」
「本物の星を見ること。」
今までの日常と生活が変わったせいだと思う。
お父さんに対してこんなに素直な態度を取れたのは小学生の時以来だった。
「そうか。お父さんも見たいなあ。」
その後は当たり障りのない世間話をして家に帰った。
その夜だった。
「臨時ニュースです。政府と気象庁は合同で小惑星が複数、激突したと発表しました。地球に落下する危険は今のところないようです。」
「次から次へと…。」
一時的に家に帰っていたお母さんがスマホに連絡が来ていないか確認する。
「やばいことって重なるんだね…。」
「そのうち落ちそうだなあ…。」
悟とお父さんも率直な感想を言い合う。
「激突した小惑星ですが、燃え上がり太陽のような状態になったと言うことです。」
「太陽?」
私の小さい声は興奮したアナウンサーの声にかき消された。
「ご覧ください!気象庁提供の画像です。40年前の太陽とこの激突で誕生した太陽、そっくりです。」
画面が切り替わる。
総理大臣が少しやつれた顔に嬉しそうな表情を浮かべて言う。
「何が何だか…。畑違いなもので聞いてきた話で申し訳ありませんが、小惑星が複数激突したと一昨日確認されました。激突した小惑星ですが、燃えて40年前にあった太陽と同じような働きをしています。えー、したがって人口太陽修復の計画を取りやめ、電力供給も平常通りに順次戻していくことにしました。」
ちらっと窓の外を見ると空にころんと丸い何かが浮いていた。
「そっか、太陽ってあんな形してんだ…。」
それが私と太陽のファーストコンタクトだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます