夢が叶ったら
「ねえ、本当に太陽がなかった時があるの?」
信じられない!と今にも叫びそうな顔のくるみが聞く。
「本当にあったんだからね。あんたが病院行くためにおじいちゃんが腰痛めながら発電したんだよ。」
「えーっ!!」
「ま、おじいちゃんにとってくるみは太陽だからね。どんな苦労もどんと来いって感じなんじゃないの。」
思った通りだった。
太陽が新しく出来た日の夜、初めて見た星は今まで見てきた全ての物より綺麗だった。
星のこと、もっと知りたい。
その一心で授業を真面目に受けるようになった。
大好きな星に仕事として関わりたい。
毎日時間に関わらず星が見られるプラネタリウムで働きたい。
学芸員の資格を取るためにそれなりに頑張った。
「ねえねえ、夢を叶えるってどんな感じ?」
「んー…好きなことを仕事に出来る感じかな?うまく言えないや。お兄ちゃん達にも聞いた方、いいかもよ。」
結局、私は私のままだった。
「ええ〜、お兄ちゃんとさとちゃんには聞きにくいから、かなちゃんに聞いてるんじゃんかー。」
寝るのが大好きで、隙あらば楽がしたくて。
美味しい物、食べるのも大好きで、あんまり頼りにならない。
きっと私達はこの先も色んな自然現象に振り回される。
「まじで言っとくけど、興味ないことは専攻しない方がいいからね、まじで。」
「はーい。」
誰のためにも輝かない太陽が今日も沈む。
「高野さん、そろそろ施錠しますよ。」
「ごめんなさい、ほらくるみ。帰るよ。」
ぼんやりしていたら同僚に声を掛けられた。
空には小さな星が出ていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます