第48話 強襲作戦②

「ねぇクレアさん、森の奥からすごく禍々しいオーラが流れて来るのですがこれは?」


と息をぜぇはぁ切らしながら俺は言った。


「魔物の魔力よ。【魔力探知】ぐらい誰でもできるでしょ。それに、これは魔法が全く使えない人でも気づくほどの魔力量ね。」


確かにヤバそうだ。膝を着いたまま顔を上げて周囲を見てみると、一面に魔力が立ち込めているように見えた。。


「よし。みんな着いて来ているな。アレス、魔族の位置は掴めたか?」


すると偵察係の爽やかボーイが、


「正確には分からない。けれど、後方に不可解な魔力の流れを感じる。恐らく隠匿魔法かなにかが使われていると思うよ。」


とか説明してくれた。


隠匿魔法……?あとで鑑定に聞いてみよ。


「なら、群れの後ろに回り込む、というのはどうですか?無駄な戦いは避けるべきだと思いますし。」

「私も賛成!めんどくさいし、あんまり魔力消費したくないんだよねー。」

「いいと思うわ。他の冒険者グループが来るにはまだ時間がかかると思うし。」


みんな首肯してる。俺もなんか言とっくか。


「じゃ、自分もそれに賛成です。」


よし!噛まずに言えた。これでおけ。


「分かった、そうしよう。クレアが言ったように囮部隊よりもかなり先行してしまうが、この際仕方がない。隠密系のスキルを使っておいてくれ。」


助けて鑑定!隠密スキルの取得方法は?


『はい。全身を循環する魔力の流れを、今度は肉体に抑えるようにします。』


むむ、こうか?


『スキル【魔力隠匿Lv1】を取得。【隠密】スキルに進化させるためには、Lv5が必要です。』


ふぅーん。まぁ、移動しながら練習してみるか。


全身の魔力を肉体に留まらせるような感覚を維持する。よし、コツを掴んだぞ。


「回り込んで奇襲をかける。くれぐれも会敵しないように、隠密行動をしろ。」


他の4人が頷いたので、合わせてうなずいた。


そして、停止した6人組の奇襲パーティーは再び動き出した。総数約300体の魔物の群れとは一定の距離を保ちながら、集団の後ろへと走っていく。


俺はそのパーティーの最後尾で、必死に着いて行くのであった。


「はぁ、こんなスピードで走れるよねぇ、みんなは。」


またもや俺が弱音を吐くと、「静かにしなさい!バレたらどうするのよ!」と大声で返された。


なんとかAランクパーティーの4人の人達は、獲物を捕らえようとする狩人のような鋭い目をしている。まさに、熟練の冒険者って感じだ。


隣のクレアさんは……、なんか、すごい華奢って言うのかな?いや俺の語彙力終わってんな。


しにそうになりながら走っていると、前の方に魔物の影が。


「あぁ!魔物!ファイアボール!」


頭に酸素が回ってなくて、脊髄反射で魔法を撃った。ゴブリンは丸焦げになった。


「ユウキ!何やってるの!」


「ごめんなさい!」


「ミスは仕方無い。けれど、この状況はマズイな。」


焼け焦げたゴブリンの周りにまたゴブリン。奥にも数体いる。うわぁ、俺が完全にやらかしたパターン。ホントごめん。


「突破するぞ!突撃だァ!」


オオー!とみんな合わせて声をあげた後、大群に突撃し始めた。俺も負けじと進む。

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