第41話 冒険者試験②

「2人ともすげぇな。魔力量は俺よりも多いぜ。だが、実力は魔力だけでは決まらない。ここで1つ、実践訓練を行おうと思う。」


実践訓練……だと?さっき一撃を受け止めたんだから、それで許してくれないのかなぁ。


「じゃあ、私から行くわ。」


「いや待て。2人で協力して俺を倒してみろ。俺を倒すのには、2人でも一筋縄ではいかねぇぜ。」


「私1人で十分よ。こんな陰険野郎と協力なんて嫌だわ。」


うわぁこいつ口悪いなぁ。まあ、女子はみんな性格悪いって聞いたし……。いや、この事女子に言うとボコられそうだからやめよう。


「ダメだ。冒険者は様々な危機に直面する。その為、パーティを組むことは必須となる。その時の練習だと思ってやれ。」


パーティかぁ……。俺はソロプレイがいいな。モ〇〇ンとかやる時もいつも1人で素材集めてたし。チャット怖い。


「聞いた?試験官を倒せば2人とも合格だって。ムカつくわね。私だけで全部片付けるわよ。」


おおう、自信あるなぁ。まあ、魔力量Bとか言ってたし、相当強い魔術師には変わりないのだろう。


「じゃあ俺は、後方で援護してるわ。」


そう言って俺は少し後ろに下がり、女子は奴と相対した。


「いいのか?2人同時にかかって来なくて。」


男はニヤリと笑った。この強者感……只者じゃない。多分。


「行くわよ!ユウキ!」


すると女子は腰に携えている鞘から剣を抜き、地を蹴って振りかぶる。敵の男は高速で斧を構えた。は、速い。


「クレアとか言ったか。お前、剣術も使えるのか。すげぇな。」


「最近の魔術師は、護身術も必須なのよ!」


刃同士がかち合うが、明らかにパワー負けしている。男も結構余裕そうだ。


『マスター。魔法による援護はしないのですか。』


そうだな。Cクラス魔法でいいか。「ファイアランス!」


俺が手に炎をまとい、炎槍を撃とうとした途端、女子が後ろを向いて、慌てて右に退避した。


「何やってんの!私に当てる気!?」


「いやミスった!ごめん!」


敵だけ狙うのは厳しいぞ。弾速もそれ程速く無いから回避されるだろうし、近接戦を仕掛けるクレアと被らないようにしなきゃいけない。


「ユウキも、遠くからしょぼい魔法なんて撃ってないで攻めてこい!2人でも捌いてやる!」


剣撃が重なる。男は余裕そうに話しているが、こっち側はかなり息が切れている。


「クレアさん、危ない!」


彼女の振りかぶった渾身の一撃が、あえなく弾かれてしまった。間合いが開けたその隙に、炎弾ファイアバレットで狙撃した。


しかし、斧の振り下ろしで高速の炎弾が文字通り切られてしまった。どんな反射神経だよ。


「今の魔法は中々良かったぜ。しかし、俺には届いてねぇがな。」


彼女が数歩後ろに下がった。男は余裕そうに笑っている。


「俺が前に出ます。クレアさん、援護して下さい!」


「気安く名前を呼ばないで。というかあいつ、まだ全然手加減しているわ。貴方に勝てるかどうか......。」


確かに。明らかにパワー負けしているもんな。


「けど、やってみるしか方法は無い。俺ごと当てる気で、魔法を撃ってくれ!」


「そうさせて貰うわ!」


俺は前に出て、轟然たる巨体と相対する。彼女は剣を収めて魔法発動の準備をした。





























  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る