第38話 薬草、売るよ!

よく分からないが決闘を仕掛けられ、なんとか大丈夫だったらしいのでギルドに歓迎された。やったぜ。


しかし、依然としてギルドは静まり返っている。相当やばい事が起こっているのだな。


「冒険者登録の受付は奥でできる。まぁ、お前さんの強さなら余裕だな!」


と笑って肩を叩いて来た。こういう雰囲気の人は苦手なのだが、良い人そう。いいね。


とことこ歩いて、それらしいカウンターにいる人に話しかけてみることにした。


そこに受付嬢っぽい女性がいる。おお、超ファンタジー世界っぽい。


「え、えっと、ここで冒険者登録って出来ますか?俺、初めて来たんですけど。」


「はい。冒険者登録ですね!ここでできますよ。身分証などはありますか?」


「無いんですけど……。」


「大丈夫ですよ。では、こちらの契約書にサインをしてください。また、登録料として銀貨10枚を頂きます。」


なに、銀貨10枚か。所持金は銀貨5枚しかないのだが、こういう時のために薬草集めたり魔物狩ったりしてきたのだ!


「えと、先に薬草とかの素材を売却したいんですけど、できますか?」


「はい。ここのカウンターでも素材を買い取れますよ。」


と、終始笑顔である。


「失礼ですが、お客様は素材をお持ちで無いように見えますが?」


「あ、大丈夫です。出すんで。」


と言うと、受付嬢は少し不思議そうな顔をした。


というか周りを見ても、歩いて動き回っているのは俺だけだな。冒険者っぽい人もテーブルに座ってるし、受付嬢も仕事が無くて暇そうだ。


ここでスライム出すのはマズいかもしれない。うーむ……。まあいっか!自分はテイマーだという事にしよう。


何出そうか。やはりここは王道の薬草!上の看板にも、レートとか書いてあるし。全部売っちゃおう。


「スライム、薬草全部出して!」


どこからともなく飛び出して来たスライムが、とんでもない量の薬草の束を吐き出した。もう、俺の身長くらいありそう。


「はい、薬草ですね……ってえええええぇぇぇ!!!!?????」


ギルド嬢が驚嘆して大声を出すと一気に視線が集まり、その束を見た人達が連鎖するように「えええぇぇぇ!!??」と叫び出した。


「えっと、ごめんなさい!このスライムは悪い子じゃないんですよ!」


やはりこのスライムが不味かったのか?とりあえず謝っとこう。


「いえ、違いますよ!何ですかこの量は!?ざっと200束以上はありますよ!」


スライムは悪くなかったらしい。良かったー。


「あ、えっとじゃあ、この薬草の換金出来ますか?あと、このスライムはテイムした奴なんで、大丈夫です。」


「ももももちろんです!」


やや顔を引き攣らせながら言った。すると、カウンターの傍に置かれた大量薬草の前に人が集まって来る。


「すげぇ量だ!これはすげぇ。」

「これ全部薬草なのかよ?」

「スライムから出したの?凄い!」


などとさじが飛んでくる。嫌だなぁ。やらかした。俺はあまり目立ちたくないし、人と関わりたくない。だって、陰キャだもの!


「すみません。量が多くて計量に時間が掛かります。少しお時間を取らせて頂きます。」


てな感じで、馬鹿みたいな量の薬草を圧縮して箱に詰め、裏方に運んでいった。すごい。薬草って畳めるんだな。そりゃそうか。


てか200束なんてスライムに収納させた覚え無いのだが?まあいいか。考えるのメンドクサイ。


「なぁ、ユウキって言ったか?やっぱすげぇなお前!そのテイムしたスライムがこんな事出来るなんて、知らなかったぜ。」


と、さっき一撃を交えた人が声をかけてきた。


「まあ、それなりのスライムなんで。」


適当に流しておこう。人と話すのこわい。


「ねぇユウキさん、良かったら、私たちのパーティに入りませんか?」


男の子うしろにいる女性が話しかけてきた。この人達は、同じパーティの人なのかな?知らんけど。


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