第37話 冒険者ギルド
よく分からないが街に潜入することが出来たので、俺は冒険者ギルドに向かう事にした。
「うーむ。地図見ても全く分からん。」
『鑑定より……ギルドまでの道のりを表示しましょうか?』
「お願いします!」
鑑定ありがたいな。あと、一応スライムはポケットに突っ込んで隠している。
よし!冒険者になって、理想の異世界生活を謳歌するのだ!行くぞ!
といった風に意気込んで街中を走り出し、遂にギルドに到着したのである。というか、道を歩いている人が建物に比べ少ない。
「すげぇ。ここがギルドかぁ。かなり大きな建物何だな。」
直感で5mくらいの高さがありそうだ。外見は、ファンタジー世界のそれと完全に同じ。
それにしても、街にも、ギルドの周囲にもあまり人が居ない。この街は人口が少ないのかな?知らんけど。
すぅーと息を吸い込み、数歩歩いて、ギルドのドアを開けた。そこに映る景色は……、
(げぇ!何だよこの冷ややかな空気は!)
建物内には数多くのテーブルと、受付らしきカウンターが多数あるのだが、そこにいる人の視線が怖い。だが人の数は多い。
そして、殆どの人の視線が俺に向いている。ヤバい、俺、死にそう。誰か助けて。
『鑑定より……マスターの服装が物珍しいのでは?』
いやいや、そういう問題じゃないやろ!これは俺でも分かる。多分、重大な事件か何かが起こったんだろう。
ギルド内の人々の表情は険しかったり、こちらを睨んでくるようなものばかり。笑おうとしている表情では無いのだ。
『冗談ですよ。どうやら深刻な問題が発生しているようですね。』
だからさっき俺、それ言ったじゃねぇか!
くっ……だが!怯えるな俺!ここでドアを閉めたら、冷徹な空気の中で、覗きに来たただの変質者……!歩いて、冒険者の受付に行かなくては……!
ここまでの思考僅か3秒。3秒の静止の後、俺は再び足音を立てて歩き出した。
誰も動かない。まずはよし。後は受付に着けば……
「おい兄ちゃん、見慣れない顔だな。ここは他の雑魚が来るような場所じゃねぇんだよ。帰ってくれないか。」
こ、こぇ〜!誰だよこいつ!身長2メートルぐらいあるし、なんかでっかい斧持ってるし!
「今、ギルドは緊急事態にある。人手が欲しいのはやまやまなんだが、新米を傷付ける訳にぁいかない。お引き取り願おうか。」
やっぱり緊急事態!しかし、ここで引き下がる訳には行かんよ!実力を見せて、おまえすげぇな展開に持ち込むのだ!!!
数メートル先に奴はいる。そして、ギルド内はかなり広いが、魔法の無造作な発動はマズイ。
俺は1歩、足を進めた。
「それ以上歩けば、武力行使もやむ無しだぜぇ。良いのか?」
男はニヤリと笑った。こいつ、キャラが定まってない!
まあ、こちらから手を出すのは止めておこう。相手が仕掛けてくるのを待つのみだ。
ギルド内は緊迫した空気。彼しか話して居ないのに、ギルド全員がこの戦いを凝視している。
俺はもう1歩近付いた。
「怪我はさねぇよ!」
背中から大きな斧を携え、力強く縦に振りかぶろうとする。これは短剣では受け止めきれない。腰に手を当て、抜刀する素振りを見せた。
「
真剣では間に合わない。柄に触れず、虚無の剣を構えた瞬間、握りかけた手に豪炎がまとわれていき、燃え盛る炎の剣の形をなした。
『鑑定より……攻撃のアシストをします。』
軌道が見えた。あわせて横に振り払うと、炎の実体の無い剣と、銀刃が煌めく巨大な斧がかち合い、赤色の火花を散らした。
「くっ、押される!」
斧の振りかぶる速度とパワーが強く、若干後退してしまった。しかし、それは相手も同じだ。
「嘘だろあいつ、ゲイルの一撃を止めやがった!」
その一閃のあと、静寂だったギルド内が賞賛にたちまち包まれる。
するとさっきまで刃を交えた男が斧を収め、頭を下げてきた。
「お前さん、超強ぇじゃねえか。雑魚なんて言って悪かった。俺はAランク冒険者のゲイルと言う。なんせ、今は大変な状況で街の人もみんな避難してるもんだからなぁ。」
ん……?どういうことだ?
「えっと、大変な状況って何ですか?俺は、冒険者登録をしたいんですけど。」
「知らんのか?じきに魔物の大襲撃が行われる。だから街の人はみんな出払っちまった。残された精鋭部隊の俺らで、シェルの街をなんとか防衛しようって話なんだ。」
ふーむ……?ちょっとよく分からないのだが?
『鑑定より……恐らく、近頃に起こる魔物の大襲撃に備え街の人々は避難しており、冒険者の精鋭を集めて抵抗を試みようとしている様子です。
そして、他の街から来た冒険者を危険な目に遭わせない為に、こうして来た人を追い払っているのだと思われます。』
ふむふむ。まじかよ!とりあえず、自己紹介しとこ。
「えっと、俺は優希って言います。ここで、冒険者登録をしに来たんですが、出来ますか?」
すると怪訝な顔をして、
「お前さん、何にも知らないんだな。確かにここで冒険者登録はできるが、今は危機なんでなぁ。」
あーね。理解した。まじで。
「なるほど、分かりました。なら、俺にも戦わせてくださいよ!勿論、冒険者登録をしてからですけど。」
「ありがとう。危険だが、是非俺たちと戦って欲しい。だが、ギルド規定にのっとって試験はちゃんと受けてもらうぞ。まあ、お前さん程の強さがあれば楽勝だろうがな!」
やったぜ!何かよく分からないけど、冒険者登録の試験を受けられるようになったみたいだ!
────────────────────なんか違う気がするけど、まあいっか。
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