第33話 森を抜けて

「ううん、ここは......?」


目を覚ます。なんだか前にも見た事のあるような風景が広がる。


『......マスターの意識回復を確認。』


「あぁ、生きてるよ!」


仰向けの姿勢から何とか立ち上がり、服を軽くはらって周りを見渡してみる。


相変わらずの濃い森林の中だ。視界の片隅には、倒れたモンスターが横たわっている。


「この展開......前にもやったよなぁ。」


『やりましたね。マスター作者が遠回りを重ねた事が原因ですよ。』


そして首を落として足元をみると、一定の間隔で揺れる水色の魔物が。


「おーい!スライム、生きてるかー?」


膝に手をつき、近くで呼ぶとスライムが飛び起きた。


『鑑定より......スライム 魔力枯渇を回復。』


スライムは突然起こされて一瞬驚いていたが、直ぐに自分の認識して、ポケットに入っていった。


「なんとか無事だったな。それにしても強敵だったな......フェンリル。」


俺がそう言ってなきがらの方を向くと、さっきはあったはずなのに消えている。


「あれ?無い?」


『既にスライムが回収しましたよ。』


は、早すぎる!目にも留まらぬ素早さだ。


「ふぅ。色々遭ったけど、魔物の夜を脱する事がなんとかできたな。スライム、ありがとう!」


スライムが嬉しそうに飛び跳ねる。


『私への感謝は無いのですか?貢献度はスライムとりも高いと思われます。』


「スライムは可愛いからプラス1億万点じゃあ!」


『......理解不能です。』


ともかく、本当に生きてて良かったー。


今の自分がいるのが信じられないほど。現実世界ではこんなこと絶対できなかったなぁ。


「【鑑定】!ナビと周辺索敵、よろしくね!」


『了解です。現状で最も効率的なルートを視界に表示します。』


「よっしゃあ!スライム、出発だよ!」


誰もいないのに大声を出した。傍から見れば変人......いや誰もいねぇわ。


鑑定との会話は他人に聞こえないしな。


そんなこんなで、3回目の冒険出発なのであった。




「ねぇ【鑑定】、ゴブリンとかと遭遇する確率が減ってるような気がするんだけど、これって昨日のフェンリル倒したせい?」


『そうだと思われます。フェンリルはこの森の守護者的な魔物であると推測できるため、魔物の統率が乱れているのだと考えられます。


今頃は巣穴で怯えていますよ。マスターが火あぶりにしに来るのをね。』


「うわ物騒......。俺は、そんな事しないよ!」


俺と鑑定が会話(傍から見れば俺が1人で喋っているように見える)をしていると、やや遠くに緑の魔物らしきものが。


『マスター。14メートル先にゴブリンです。』


「ファイアランス!!」


ゴブリンは放たれた高速の炎の槍を喰らって倒れた。


『どの口が言うのですか。』


「火あぶりではないからセーフ!」


すると鑑定の返信が一瞬空白になる。


『......はぁ。それよりも、あと500メートルで森林を抜けますよ。


さっきのゴブリンも、ヤディアの森の魔物軍団の統率外だと推測されます。』


あと500メートル!もう少しだ。


「スライム、飛ばすよ!ファイアアクセラレート!」


僅かに紅い炎を身体にまとって、俺は超スピードで走り出した。


『馬鹿なのですか?あと474メートル、魔力の無駄ですよ。』


「誰かが言ってたじゃねえか!【ゴールが見えたら突っ走れ】って!」


『マスターの脳内を検索中......該当記憶無し。即興で考えたと推測。』


こいつ......俺の記憶を検索する事もできるのか......?


そういえばAIとかゲームとか、この世界のスキルなら知るはずが無いもんな。ますます謎だ。


木々の幹を瞬速でかわしながら、ひたすら走りまくる。


すると木々の葉や枝からこぼれてくる光の量が、だんだん多くなっていく。


「見えた......森の出口だ!」


一際明るい光が差し込む空間へ、一目散で駆けて行った。



「うわ、眩しい......。」


長い間暗闇にいたせいか、明るさのあまり目を閉じてしまう。だが慣れて来たので、ゆっくりと瞠目してみる......。


「わぁ、平原だ!」


森の中とは全く異なり、一面に見渡せる草原には、まばゆいばかりの日光が当たっている。


そこらじゅうに魔物がちらほら見えるが、森の中ほど陰険で凶悪ではない。


そしてなだらかな丘の向こうに、うっすらと建物の影が。


『何を感動しているのですか。まるで子供のようですね。』


「綺麗だと思わない?!鑑定。」


『別に。何とも。』


うわ、冷たいー。まいっか。


「よし!スライム、行くぞ!」


スライムもポケットから飛び出して、緩い傾斜の丘のいただきに向かっていく。


頂上に近付いた為、歩幅を短くし、ゆっくりと歩いていった。


「これは......壮観だな。」


街が、凄く広い。


ここから1キロ以上まで色んな建物が連立している。整然とでは無く、曲がりくねった道が多い。


見た感じは予想通り、中世ヨーロッパ風の建築だ。


「よし、行くぞ!」


飛び跳ねるスライムと共に、街の入口の門を目指して駆け出した。


やっと......。やっとだ!


ここまで本当に長かった。魔物多かったし、陽キャウザかったし、現実世界も辛かったし......。


しかし、ここではそんなものは無い!俺を遮るものはない!


俺の異世界ライフが、ようやくはじまるんだ!




────────────────────

ようやく1章終わりです。あと、2章から本編です。ここまでグダったのは作者の未計画が招いた事です。ごめんなさい。


★や評価を頂けると嬉しくて号泣します。是非よろしくお願いします。


あとちょっと遅れました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る