第32話 死闘の末に

「……【鑑定】!」


『鑑定結果......フェンリル 神獣種? Lv17〜

名前......無し 性別......? 状態......?

その他の情報……解析不能』


すくない!


レベルが上がった鑑定スキルでも、得られた情報が少ないな。それだけ相手も格上って事か。


『注意。魔法攻撃が来ます。』


前方から輝かしい閃光の雷撃が飛んできた。


「……はや!」


僅かに反応が遅れて、電撃に当たってしまう。


左手が焼け焦げたような痛みを感じる。


「鑑定さん、今の攻撃は?」


『鑑定結果……属性外 電撃魔法だと推測。速度が速く、回避が難しい魔法です。』


なるほど……遠距離での魔法の撃ち合いはこちらが不利だな……。


『フェンリルは魔法攻撃を得意としますが、白兵戦は苦手です。接近して攻撃して下さい。』


「了解だ!スライムも、行くよ!」


スライムがポケットから飛び出す。それと呼応するように俺は地面を蹴った。


「目指すは正面突破!」


『注意。その剣ではフェンリルに致命傷を与えることはできません。有効打を与える為にはやはり火炎魔法が必須です。』


「ああ、分かってる!」


フェンリルに近づくと赤いマークは後退し、口元が眩く光らせる。


『電撃魔法です。右に回避を。』


脳内に響いた言葉の通りに動くと、体のすぐ横を電撃が掠めた。


『左です。』


また避ける。何度も避ける。フェンリルの魔法攻撃をことごとく避けながら、大きな影に接近していった。


「まだ攻撃しないの?鑑定?」


『まだです。マスターが現在発動可能な魔法ではフェンリルに太刀打ちできません。』


まじかよ。これでもゴブリン瞬殺できるくらいなんだけどなぁ。


フェンリルとはある程度の距離を取りながら、弾幕戦を展開する。まあ、こちらが一方的に撃ち込まれているだけだが。


周囲の魔物の包囲網は、全く動かない。


この戦いを邪魔しようとはせず、緊迫した様子で静観しているようだ。


走りながらの高速戦闘は、しばらく続いた。


『足元のスライムに【水流障壁】を発動させてください。』


足元のスライム?暗闇で何も見えないんだが。まあいい、叫ぼう!


「スライム、ウォーターバリア!」


すると背後から物体が跳んできて、俺の目の前の空間に留まりバリアを形成した。


その半透明なバリアに、フェンリルの魔法がぶつかって火花が散る。


「......今だ!ありがとうスライム!」


バリアが破壊されると同時に、スライムの前2飛び出した。


そして遂に、逃げ回る影の姿を捉えた。


「ファイアバレット!」


高速の炎弾が飛んでいき、その体に命中した。


「これはいける......」


フェンリルに炎弾が当たったその時、首を上げ、口元に煌々と輝く電流を集めだした。


「これってやばいのでは?」


『マスター。上に跳んでください。』


言われるがままに身体を反応させ、木々の枝に当たりそうなくらい高く跳躍する。


「うわ......高い!」


『好機です。フェンリルに飛び乗って、ファイアバレットを発動して下さい。』


「よっしゃ、ファイアバレット×5!」


落ちながらフェンリルの背中の位置から、大砲のような紅弾を連射する。


フェンリルは、火炎魔法の連撃をくらい、ゆっくりと倒れた。


「ふぅ......。強敵だった......。」


目元がふらふらする。またもや、魔力切れのようだ。


『周辺魔物の散開を確認。』


「あぁ、ありがとう......。俺は眠いから寝る......。」


疲労困憊で、地面に倒れ伏してしまう。


そして、意識が急速に遠ざかっていった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る