第31話 暗闇の中で

「……野宿するとは言っても、本当に地面に寝ていいもんなのか?」


『はい。現在時刻は10時18分54秒です。6時には起床し、早々に出発して下さい。』


くっ……鬼畜!もっとハンモック作るとかさぁ、木の上で寝るとか出来ないものなのかねぇ。


『言っておきますが、マスターの脳内思考も聞こえていますよ。』


「え?マジ?」


『スキル【鑑定】はマスターの脳内情報や鑑定が入手した情報をもとに演算を行い、分析結果を導き出していますからね。』


何か、思考が盗聴されているようで嫌だなぁ。まあいっか。便利だし。


『あと、睡眠中は酸欠の恐れが有ります。注意して下さい。』


「無理だろ!どうやって睡眠中に酸欠対策するんだよ!」


『具体的には……』


「あっ結構です!」


何だか、この【鑑定】スキルは所々抜けがあるな。まあいっか。疲れたし寝よう。


「スライムもお疲れ!今日はもう寝よう。」


ポケットからするすると出ていくと、地面に寝転がって眠りについた。


「さて、俺も寝ますかな。」


先程スライムに出してもらった下級薬草と魔法草の束を敷き詰めたベットに飛び込む。


「ふむ……悪くない寝心地だな。さっさと寝て早く街に辿り着こう。薬草も、それなりの値段で売れるだろうしな……。」



よく考えれば異世界に転生してからもう5日位経った。


僅かな日数だけど、俺にとっては現実世界よりも充実していて、楽しく感じた。


「……こつこつレベル上げもしなきゃダメだな。まあ、明日から頑張るか!」


目を開けて上を見上げてみる。


といっても、もたれかかっている木の枝葉と暗闇のせいで、何も見えない。


「ふぅ……疲れたなぁ。」


無意味な思考を重ねて行くうちに、意識がだんだん遠くなって行く……。




★★★




『……下さい……起きて下さい。!』


「なに!?」


頭が割れそうになるような大音声が直接脳に響いてくる。


ばっと立ち上がって周囲を見渡してみるが、暗黒のせいで視野は真っ暗だ。


『鑑定より……周辺に無数の魔物反応。完全に包囲されています。』


目を凝らすと、幾つかの紅く光る魔物の目が映る。まだ寝起きで、視界がぼやける。


「鑑定!何があった?敵の数は?」


『鑑定結果 ゴブリン……48体 ホブゴブリン……9体 オーガ……6体 フェンリル種?1体


察知した時には既に包囲されていました。フェンリル種だと思われる個体が、この群れを指揮していると考えられます。』


「何で早く起こさなかったんだ?!」


『索敵能力には限界が有ります。』


……と、そんなこと言ってる場合じゃない。


かなり不味いな……。というか、フェンリル?絶対強敵じゃねぇか。


「スライム!どこ?大丈夫?」


叫ぶと足元から飛んで来て右肩に乗った。


『叫ばないで下さい。刺激を与える可能性が有ります。』


だよなぁ。なるべく戦わず逃げるべきだ。


「鑑定、敵の位置をマーキングして!」


すると、一斉に視界が赤いマークに埋め尽くされる。


「量エグ……。流石にこれは……。」


振り向いたり首を回したりしてみると、等間隔で至る所に魔物が待ち構えている。


包囲網の距離ここから半径30メートル程の距離だ。かなり遠い。


『注意!フェンリル種だとおもわれる個体が単独で接近してきます。』


円環の包囲陣から、一体の魔物が近付いて来る。


最初はうっすら影が見えるだけだったが、目が慣れ、接近すると全貌があらわになる。


「フェ、フェンリルだ!」


闇夜でも分かる、純白の毛に包まれた華奢な体躯。


四本足で屹立するその影は馬の様で、伝説の世界の幻獣を想起させる。


「こいつは……やばそうだな……。」


────────────────────────時間が無かったので明日修正します。誤字報告ありがとうございました。

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