第30話 ヤディアの森

「もう一度だ……!ファイヤバレット!!」


離れた所から残りの敵めがけて炎弾を放つ。


体に残っている全魔力を結集した強力な攻撃だ。


「グァァ……」


高速で飛んで行った炎弾は巨体の心臓を穿ち、オーガはゆっくりと倒れた。


『鑑定より……目標の撃破を確認。』


や……やったのか。何とか倒せたようだ。かなり危なかった。ほんと。


「スライム、助けてくれてありがとうね!」


魔法を発動したのか、元気が無さそうに項垂うなだれている。球状の身体がやや崩れかかって、ふにゃふにゃだ。


『個体 スライム 魔力枯渇のようです。』


「そうか……。てか鑑定!あの状態で避けろとか無理でしよ!」


『理論上反応可能な状態でしたよ。マスターの決断力が鈍ったのが原因です。』


「いや、あれは無茶振り過ぎただろ!」


『……そうですね。それよりも先を急ぎましょう。倒した2体のオーガは、この森を支配者的な立場の魔物だった様です。


その為、周辺の魔物の弱体化が予想されます。』


「まあそうだな……。スライムも、一緒に行くよ!」


と声を掛ける。


『鑑定より進言です。スライムのスキル【無限収納】で、オーガの死体を回収させるべきだと思います。普遍的にオーガの素材は非常に希少だと思われます。』


あぁ、確かにな。街に行った時に売れるかも知れないし、一応持っていこうか。


「スライム、無限収納でオーガをしまえる?」


今度は言い終わるや否やオーガに線状のそれが包み込んで、残骸は消えていた。


「よし。今度こそ出発だ何とか今日中に辿り着くぞ!」


★★★


今日中には街に辿り着くぞ!……とは意気込んだものの、またもや疲れた。このくだり、何回目だよ……。


「鑑定、あと何メートル?」


『3445メートルです。頑張って下さい。』


「ふぇー。まだまだ遠いなぁ。」


さっきからこの会話?をずっと繰り返している気がする。しかし、返ってくるのは無機質な督励のみだ。


使った事の無いBクラス魔法を連発したせいか、魔力不足で倦怠感がする。


そういえば、魔力の残量はどれだけなのだろうか。もといステータスも、しばらく確認していなかったな。


『鑑定しますか?』


脳内に機械的な音声が響く。


「うん、お願い……。」


『鑑定結果……山崎悠希 基礎情報

種族…人 年齢…15 性別…男 状態…魔力不足 疲労 その他の情報…解析不能

ステータス Lv22

身体能力値      才能値

HP…100/148(+?)     ?(?)

ATK…〜C(?)     ?(?)

DFE…〜C(?)     ?(?)

SPD…?(?)     ?(?)

MP…37/244(?)     B+〜(?)

スキル

〔固有スキル〕【鑑定Lv28/?】

〔魔法スキル〕火炎魔法 【火炎Lv6】【発火Lv3】 【火炎球Lv16】 【加熱Lv2】【火炎弾Lv2】魔法スキル 【魔力循環Lv10/MAX】→【魔力練生Lv1】

〔戦闘スキル〕【剣術Lv4】 【剣撃Lv1】

〔称号〕【魔道の才能】【魔物狩人】【魔物使い】【首領撃破】【異世界の勇者】

その他のスキル又はステータス 解析不能』


「増えた……!ゴブリン倒しまくったのが良かったのかな?」


『鑑定のLvも上昇しています。』


「あーはいはい、凄いですねー!」


脳内でどうでもいい会話を繰り広げながら、完全に真っ暗な森の中を歩く。



────それにしても、暗い。


スキル【鑑定】に歩くべき道を視界にマーキングして貰っているので、暗闇の茨道いばらみちでも転ばすになんとか歩けている。


「ねぇ鑑定、今日どれだけゴブリン倒した?」


『39体です。』


道中に現れるゴブリンは無視しよう……と思ったが、ステータスを見たせいで急にレベル上げがしたくなった。


レベル上げしたい!と火炎魔法をぶっぱなしながら進み、残骸をスライムに回収してもらう。


それの繰り返しで結構時間がかかった。


「あと何メートル?」


『何回聞くのですか。1435メートルですよ。』


「1500メートル切った!あと少し……」


そう言ったが、疲労のあまり疲れて仰向けに倒れてしまった。


『道中、魔力を消耗し過ぎましたね。だからあれ程忠告しましたのに。


マスターがにゴブリンを狩った影響で、付近の魔物の動きが停滞しています。今日はここで野宿するのはどうですか。』


「うん……そうしよう!」


言葉を聞いて、ゴブリン吸いまくりのスライムも元気になったように見えた。



まあそんな事で、俺らは森のど真ん中で野宿する事になったのである。


──追記8月16日 誤字修正しました。

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