第12話 薬師ギルドの一員になりました。

 契約テイムしたサクラをショルダーバッグの中に入れて、容子まさこが用意したテーザー銃とHK416Cカスタムの性能確認をしている。

 試し打ちで狩った獲物は、数えるのも億劫になるくらい多かった。

 外した数も多かったが、始まりの町周辺ではオーバーキルではないかと思うくらい威力が高かった。

 今のところ、出刃包丁とゴキスプレーで十分だと判断した。

 剣術レベルも上げたいし、何より弾を装填するのに時間が掛ってしまう。

 その間、完全に無防備になるので使いどころが難しい。

 素早く装填出来るほど慣れてないし、撃ちなれてもいない。

 弾も無限にあるわけではないので、射撃系スキルを取ってからスキルレベルを上げるために使用する方が得策だろう。

 狙ったところとは別方向に飛ぶから怖いんだよなぁ。

 十発中6発着弾するが、全て狙った場所じゃないところになる。

 集中力もかなり必要になるから、精神な消耗も大きいのが悩みどころだ。

容子まさこには悪いけど、射撃系スキル取るまで封印かな」

 射撃系スキルの取得には、ポイントが必要になるだろう。

 雑魚モンスター相手に、発砲は勿体ない。

 アイテムボックスに収納した素材を確認すると、結構な量になっていた。

 ウルフの毛皮×53枚

 スライムの核×89個

 ホーンラビットの毛皮×25枚

 ホーンラビットの肉×15個

 レッドボアの毛皮×1枚

 レッドボアの肉×1個

 こん棒×68個

 黄色の魔石(極小)×21個

 青色の魔石(極小)×3個

 薬草10束×49個

 マナ草10束×28個

 銀貨1797枚

 銅貨2560枚

 青銅貨13456枚

 ……一気に放出すると目を付けられそう。

 アイテムボックス内は時間停止されているから、肉も痛まないのは都合が良い。

 機会があれば、容子まさこに調理して貰おう。

 そもそも、魔物の肉って食べられるんだろうか?

 その辺りは、冒険者ギルドで聞いてみよう。

 地図と併用して索敵を展開させる。

 ちらほらと人と魔物が点在しているが、目視できる範囲にはいない。

 私は、アイテムボックスから原付バイクとヘルメットを出して始まりの町に戻った。




 ポーション作成してもらおうと薬師ギルドに訪れたが、相変わらずカウンターには誰も居ない。

「すみませーん! 薬草持ってきましたー」

 大声で呼びかけるが返事は無し。

 アイテムボックスからカラオケマイクを取り出し、ボリューム大に設定してもう一度声を掛ける。

「すみませーん! 薬草持ってきましたー。誰か居ませんかー」

「五月蠅い!! そんなに大きな声で呼ばなくても聞こえているよっ!」

 出てきたのは昨日の婆だ。

 マイクの電源を切り何食わぬ顔で鞄に仕舞う。

「呼んでも出ないんですよ。声も大きくなりますって。それで昨日言ってた薬草持ってきましたよ。後、マナ草もあります」

「さっさと出しな」

 不機嫌そうな顔で催促する婆に、私は薬草の束49個とマナ草の束28個が入ったバケツを出した。

「お前さん、アイテムバック持ちかい?」

「はい、そうでなければこんなに持ち帰れませんよ」

「鑑定するから待っておいで」

 バケツの中から薬草とマナ草の束を一つ一つ丹念に見ている。

 この婆さん、仕事はきちんとするようだ。

「どれも教えた通りに採ってきたね。群生でも見つけたのかい?」

「まあ、そんなところです」

 へらりと愛想笑いで誤魔化した。

 鑑定持ちで通しても良いけど、何か面倒くさいことになりだ。

 こういう時は、お口にチャックしておこう。

「一人でこれだけ採れれば、十分採取だけで食っていけるよ」

 そんな太鼓判おされても嬉しくない。

 私の最終目的は邪神を滅することだし、何時までもこの町に留まるつもりはない。

 ポーションが手に入ったら出ていく予定だ。

「この状態なら上級ポーションも作れるだろう。お前さん、ポーションが欲しいと言っていたがどれくらい欲しいんだい?」

「どれも下級5個、中級3個、上級1個ですね」

「結構要るんだね」

「命あっての物種ですから。不測の事態に備えて用心するには越したことがないでしょう」

「下級ポーションは1つ銅貨5枚だ。中級は銀貨2枚・銅貨5枚。上級は銀貨5枚になる。上質の薬草とマナ草を一束銅貨5枚で買おう。金貨3枚銀貨8枚銅貨5枚になる。ポーション代が金貨5枚だ。銀貨1枚と銅貨5枚足りないね」

 ポーションは、意外と高かった。

 手数料も含まれてるんだろうな。

「分かりました。銀貨1枚と銅貨5枚払います」

 財布から銀貨1枚と銅貨5枚を支払う。

 所持金が心もとないので、後で冒険者ギルドに寄って魔石と素材を売り払おう。

「珍しいものを持っているんだね。ちょっと見せておくれよ」

 サイエスには紙幣がない。

 ミニ財布を活用して青銅貨・銅貨・銀貨と中の仕切りを隔てて分けて入れるようにしている。

「滑らかな革だね。この金具を動かすと開閉するのか。これは使いやすそうだね」

 チャックという概念がないのか。

 商業ギルドでこの製法を売ったら、特許税が入るかな?

「どこで手に入れたんだい?」

 雑誌の付録ですとは、口が裂けても言えない。

「旅の人に食料と物々交換して貰いました。これは差し上げられませんが、これで良ければ差し上げますよ」

 鞄に手を突っ込み、アイテムボックスから雑誌付録で使用していないポーチを取り出して渡した。

 花柄模様がプリントさており、運が良ければ青い鳥が真ん中にプリントされている物もある。

 残念ながら、このポーチは青い鳥の胴体が途中で切れていたので使ってなかったのだ。

「良いのかい? 刺繍とも違うこんなに鮮明な絵が描かれた布は初めて見た。この財布がポーションの代金と引き換えにしよう!」

「えっ? 良いんですか?」

 雑誌は定価870円だ。

 サイエスで言えば銅貨8枚と青銅貨7枚で買える値段である。

 それが、金貨5枚に化けるなんて!

「ああ、こんな珍しいものは何処に行っても手に入らないだろう。安い買い物さ」

「ありがとう御座います」

 婆からお金を受取りホクホクしていたが、ハタッと目的を思い出した。

「ポーションっていつ出来るんですか?」

「今から作業に入るから、全部揃うのに3日はかかる。これが割札だ。失くしたら、商品と交換できなくなるから気を付けるんだよ」

「了解です! あ、後ここでお金を預けることって出来るんですか?」

「出来る。ただし出金時に銅貨1枚の手数料をお貰うがね。お金を預けている者は、ポーション購入時に1割引きされる。薬師ギルドに登録している者なら、手数料は無料になる」

 ポーションを大量に買うなら一割引きは大きい。

 ポーションのお世話になることも多くなるだろうし、ここはお金を預けよう。

「じゃあ、預けます」

「薬師ギルドは登録するかい?」

「私、ポーションの調合とか出来ないんですけど」

「調合は、薬師のスキル持ちで皆Cランク以上と決まっているんだ。F~Dランクの奴は、採取専門さ。年会費を払って貰うが、税金だと思ってくれれば良い。冒険者ギルドの様に、毎回素材の買い取りで二割取るようなことはしない。ただし、ランクによって年会費も変わってくる。Fランクは銀貨7枚だ」

 思ったよりも年会費が安い。

 採取専門と言っても、それで食べていける人は殆ど居ないだろう。

 他の職業と兼業している人が多いのかもしれない。

「他に特典はあるんですか?」

「そうだねぇ。所属すれば、在庫が余っている状態でも一定の額で買い取りをする。今回のような在庫不足の時は、高額買い取りするけどね」

 話を聞く限り、デメリットは年会費だけだ。

 メリットは預金の出金手数料が無料になる事と、どんな時でも一定の価格で買い取って貰える事。

 ここは、登録一択でしょう!

「じゃあ、登録もお願いします」

 何も書かれてない銅板と針を手渡された。

 ここは、冒険者ギルドと同じなのか。

 針を親指に刺し、ぷくっと膨らんだ血を押し当てる。

 私の情報が登録されたようだ。

 必要最低限以外非表示にしておくのも忘れない。

「年会費払っておきますね」

「ようこそ薬師ギルドへ! これからも沢山薬草を取ってきておくれよ」

 私は、金貨3枚・銀貨1783枚・銅貨2550枚・青銅貨13450枚を薬師ギルドに預けることにした。

 年会費銀貨7枚は、別途支払いましたとも。

 晴れて私は、正式に薬師ギルドの一員になった。

 採取専門のだけど。

 3日後にポーションが出来上がるので、その間は薬草採取とクエストを受けて時間を潰そう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る