第11話 新しい仲間が増えました(強制)

 寝るのは、やっぱり我が家が一番だ。

 枕が変わると寝れませんという古典的な人間です。

 繊細なんですよ、私!

 そんなアピールしても、容子まさこには「だから?」の一言で一笑されてしまった。

 時間の流れがサイエスと地球では異なるので、ご飯を食べた後、my枕と容子まさこが野宿用にと用意してくれたアウトドア用品一式をアイテムボックスに収納して家を出た。

 何食わぬ顔で借りた部屋を出て、一階に降りる。

 私を目ざとく見つけた看板娘は、

「あ、ヒロコさん。部屋に籠りっきりで心配しましたよ! それから、宿泊の延長するなら早めに言ってください」

と怒られた。

 この年で叱られるのは、ちょっと恥ずかしい。

 地球とサイエスの時差の究明は急務だ。

 時差を調べる方法を考えよう。

 何はともあれ、ポーションが無いと次の町に移動出来ない。

 宿の延長は決定事項だけどね!

「荷物整理に没頭してました。取り敢えず一週間でお願い出来ますか?」

「かしこまりました。金貨3枚と銀貨5枚です。お部屋の移動は無いので、そのまま使って下さいね!」

 部屋移動がないのは有難い。

 冒険者ギルドに行ってくるからと、お金を払い鍵を預けて宿を出た。

 地図買って良かったわぁ、としみじみ思う。

 地図がなかったら絶対迷子になっていたもの。

 冒険者ギルドに着くと、初日より人の出入りが激しい。

 丁度忙しい時間帯に来てしまったようだ。

 依頼ボードで受けられそうなものを探していると、背後から野次が飛んできた。

「ここは、ガキの遊び場じゃねーっつの」

「いつから託児所になったんだよ、ここは」

 視線だけ後ろに向けると、うだつの上がらない男連中がいた。

 鑑定してみると、レベルは20前後。

 私よりも弱い。

 相手にするのも馬鹿らしくなり、無視して目の前のボードに集中する。

 スライム討伐の依頼が貼ってあったので、それを剥がして受付に持っていった。

 美人なお姉さんのカウンターは長蛇の列だが、そうでもないフツメンの受付嬢のところは空いている。

 あからさま過ぎでしょう。

 手早く処理してくれるなら誰でも良い。

「受付お願いします」

「スライム10匹討伐ですね。ギルドカードをお願いします」

 ギルドカードを渡すと、魔法道具らしいきものの上に置かれ、パッとカードが発光した。

「討伐依頼受理されました。討伐されると自動でカウントされます。核を持ちかえれば、少額ですが買取も行っております」

 親切な人だな。

 昨日の人とは大違いだ。仕事に対する姿勢が違う。

「あの質問なんですが、ギルドでお金を預けたり引き出したりすることは可能ですか?」

「はい、可能です。世界共通で冒険者ギルド内ならどこでも預けられますし、預金を引き出すことも可能です」

「薬師ギルドや商業ギルドでは、そういうのは行ってないんですか?」

「行っています。ただ、ギルドに登録しないと預けることは出来ませんし、年会費など掛かります。お金を預けるなら、冒険者ギルドが一番ですよ」

 この世界のギルドは、銀行事業も兼ねているようだ。

 ギルドによって手数料の有無が分かれるのか。

 薬師ギルドに行った時にも聞いてみよう。

 何か別の特典があるかもしれないし。

 取り敢えずは、冒険者ギルドに預けておこう。。

「すみません。次いでと言っては申し訳ないのですが、お金を預けたいんですが良いですか?」

「構いません。テーブルに出して頂けますか?」

 金貨 、それぞれお気に入りのキャラクターがプリントされた巾着袋をに入ったものを出した。

 一瞬、受付嬢の目が大きく見開かれた。直ぐに戻ったが、巾着袋が気になるみたいだ。

「青銅貨と銅貨ですね。ギルドカードをお願いします」

 ギルドカードを渡すと、また魔法道具の上に置かれ、お金を数える道具に放り込み数分すると数え終えたようだ。

「金貨1枚・銀貨2枚・銅貨8枚・青銅貨4枚お預かりしました。カードをお返しします」

 ギルドカードを確認すると、預かり金の項目が増えていた。青銅貨4枚、銅貨8枚・銀貨2枚、金貨1枚と表示されている。

 容子まさこの助言通り確認しておいて良かった。

 手持ちは金貨1枚・銀貨3枚だ。

 牛皮のコインケースに仕舞い、ショルダーバッグを通してアイテムボックスに仕舞う。

 ショルダーバッグの中は、ダミーでティッシュとハンカチと空のミニ財布三点セットと、タオルにぐるぐる巻きにされた出刃包丁のみだ。

 腰には、テーザー銃を装備している。

 出刃包丁用のホルダーも欲しい。

 帰ったら、容子まさこに相談してみよう。

 出刃包丁が、むき出しの状態は怖いし。

「ありがとうございました」

 親切なフツメンの受付嬢にお礼を言い冒険者ギルドを後にした。




 始まりの町を出て歩くこと1時間。

 足が痛くなったので、索敵を使い誰も居ないのを確認する。

 アイテムボックスから原付バイクとヘルメットを取り出した。

 命大切・安全第一を掲げて進むこと30分。

 目的地に到着する。

 忌まわしいワーウルフと対峙した場所だ。

 索敵には、魔物も人も引っかからないのを確認した上で原付バイクとヘルメットをアイテムボックスに戻して、片っ端から鑑定を掛けた。

 雑草…雑草…雑草、薬草、雑草…雑草雑草…マナ草…。

 群生とは言い難いが、ポツポツと薬草とマナ草が生えている。

 マナ草を鑑定したら、MPポーションの素になると表示されていた。

 鑑定様様である。

 薬草とマナ草をそれぞれタコ糸で軽く結び、バケツがいっぱいになったので昼食を取る。

清掃cleaning

 泥だらけだった身体は綺麗になり、お肌も艶々だ。この清掃cleaningは、とても使い勝手が良い。

 余分な脂質や汚れを取り除くので肌の調子も良い。

 アイテムボックスに入れていた菓子パンとペットボトルのお茶を取り出す。

 菓子パン二個目に手を伸ばそうとしたら、ピンクの丸い物体が菓子パンの袋を溶かして食べていた。

「いやぁぁぁあーっ!!! 私のアンパンがっ! 値引きシール貼ってあるけど、つじやのアンパンは私の好物なのよ!! そりゃね、108円で買えますよ。でも、そうじゃないんだ!」

 ガッデムとスライムに文句を言うが、無視され袋ごとどんどんアンパンを消化していく。

 鑑定するとヒールベビースライムと出た。

 雑食だが、聖魔法をや生活魔法を好むとある。

 そう言えば、食事前に生活魔法の清掃cleaningを使ってたな。

 それに引き寄せられたんだろうか。

 スライムが食べ終わる頃には、私は哀愁を漂わせながらメロンパンを齧っていた。

「索敵してたのに、何でこんな近くにスライムがいるんだよ」

 悪意や害意がないから索敵7でも感知出来なかったのかもしれない。

 スライムは、単純に私のアンパンが食べたかったみたいだし放置しても問題なし。

「楽しみにしてたのになぁ。ん? 何、これも欲しいの?」

 足元から凄く視線を感じる。

 チロリと視線を下に下げると、物欲しげな雰囲気を漂わせたスライムがいた。

 齧っていたメロンパンを左に動かすと、スライムもススッと左に動いた。

 上下左右に動かせば、同じように動いている。

「メロンパン欲しいなら一回跳ねて」

 私の言葉を理解しているのか、スライムはその場でポンポン跳ねている。

「これも何かの縁って奴かね。ほら、食べな」

 齧っていたメロンパンを半分に分け、スライムの前に置いたら美味しそうに食べ始めた。

 食べ終えた後、ピョンピョンと私の周りを飛び跳ねている。

「もう無いよ。後はゴミくらいだし」

 食べるかな? と思ってゴミを置いてみたら食べた。

 流石雑食。

 燃費が良いね。

「薬草類は今日は切り上げて、依頼のスライム討伐しないとならんのでお別れね」

 見逃してやるから、どこかに行けと追い払う仕草をしたら、ゴスッと腰に鈍い衝撃がきた。

「いったたあああああ!」

 ズシャッと俯せに倒れる私。

 原因は、スライムだ。

「飯食わせたのに、何この仕打ち!! 私をぎっくり腰にするつもり??」

 腰に乗っているスライムを退かし文句を言うが、相手は生まれたての赤ちゃん同然で良く分かってない様子だ。

治癒heal

 聖魔法の初級治癒healを使って腰の痛みを和らげようとしたが、ちゃっかりスライムに食べられていた。

 勘弁してくれ。

「何がしたいだ、お前は?」

 何気なく撫でるようにスライムの身体に触ると、目の前にポップアップが表示された。

 <ヒールベビースライムが契約テイムを希望しています。承諾しますか?>

 YES/NOの選択が出ていた。

 YESを押すと、ピンクスライムの身体が白く発光した。

 <名前を付けて下さい>

 ピンクスライムを鑑定すると名前に部分が入力できるようになっていた。


---------STATUS---------

名前:未設定<名前を設定して下さい>

種族:ヒールベビースライム

レベル:1

年齢:0歳

体力:1

魔力:30

筋力:1

防御:1

知能:1

速度:1

幸運:100

■スキル:神聖魔法1

■ギフト:なし

■称号:なし

-------------------------------


 私は運に対し、こやつは幸運……だと!

 羨まけしからん。

 私も幸運が良かった。

 私の場合、絶対悪運だよね!

 良くも悪くも、運が良い働きをしてくれるから。

 ステータスは、魔力と幸運以外は低い。

 こやつ、今まで幸運だけで生き延びてきたんだな。

「サクラっと」

 サクラと名付けたら、スライムの感情が流れ込んできた。

 嬉しいみたいな感じ。

 我が家のペット達からは、何も感じないのに何故だ?

 これも検証が必要だな。

「サクラ、お前は鞄の中にでも居てなさい。戦闘で巻き込まれても助けられんからおとなしくしとくんだよ?」

 直径3センチくらいの饅頭スライムことサクラを鞄の中に入れて、討伐対象のスライムを狩りまくった。

 途中で遭遇したホブゴブリンやウルフ、ホーンラビットを隠密を使ってテーザー銃とHK416Cカスタムの練習台にした。

 死骸が量産されたが、後悔はしていない!

 この後、弾を無駄遣いしたことで容子まさこにギチギチに絞られたのは言うまでもなかった。

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