㐧31話 当たらなければどうということはない
「どうやって!?」
“真力を見る”能力なんて聞いたことないぞ!?
どうしてそんな芸当ができたんだ……!?
どんな強キャラでもじんわりと感じることしかできないはず……!
「どうして分かったか気になってる表情ですねぇ。」
「…………ッッッッ!!!?」
心まで読めるのか!?
「フフフ。教えてあげますよ。簡単なことです。」
そう言って武上は素早い歩きで俺に一瞬で近づき、自身がつけていたメガネをつけた。
「お、お、お! ちょっと!やめてくださいよ!」
「怖くないですから」
「怖いんだよ!!!」
「まあまあ」
「“見”たらわかりますよ」
おおよそ年代モノの眼鏡にしか見えなかったそれを身につけた瞬間、凄まじい勢いで視界に情報が流れてきた。
まるで共産主義国家の街並みのように整然とされたインターフェースが、完璧なリズムで情報を集約し、視界に届けているのだ。
「は!? え!?」
「ウェアラブルデバイスです。将来スマホの次に手放せなくなりますよ」
裸眼の武上は少しだけ真摯な表情を見せてゆっくりと指示した。
「向井さん、右手を見てください」
指示通り右手を見ると、そこには白い粒子のようなものが高速で迸り、迸るそれが右手全体を覆っているようだった。
「……真力が流れてる……。そうか、この眼鏡で俺の真力を。」
「そうです。理解していただきましたか?」
「はい、それはもう、十分すぎるぐらいに。」
「では早速向かいましょうか」
「え?どこへ。」
「レギオン技術部、特殊実験室ですよ。」
———
武上が運転する自動車に乗って早1時間。景色は変わるが空気は変わらない。
密室空間に変人と過ごす事がこれほどしんどいとは思わなかった。
それも、助手席!
「あの……」
俺はおずおずと武上に聞いた。シミュレーションについてのことだ。
「何か?」
「テスターに選ばれるのはいいんですけど、僕ら病み上がりなんですが……?」
「あぁ、その点については心配ご無用です。今回体験するシミュレーション装置のですね、使用した時の肉体的状態は睡眠状態と全く同じなんです。」
「じゃあいいだろ。」
飯島は後部座席から他人事のように野次を飛ばす。お前もやるんだぞ、お前も!
「まあ、シミュレーションとはいえ、痛みは感じますがね。むしろプラシーボ効果でより強くなるかも、ですね。」
「はぁ?! じゃああんたアレか!? 怪我して血出た時、血出てない時よりも痛く感じるようなもんか!?」
「まさにその通り! 勘が鋭いですねぇ」
「ふざけんなよ〜〜!」
「まあ、痛みを感じなければいい話です。よく言うでしょう、” 当たらなければどうということはない”って……。」
「あんた無茶苦茶言ってんな!?」
「まあ大丈夫ですよ、最悪記憶消せばいいですし、多分……。」
「ひ〜〜!!」
なんだか武上の方が怖い気がしてきたような気がして、俺は悲鳴を上げた。
だがそんなことで車は止まらない……。それは彼も同じことなのだろう……。
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