㐧五話 大勢であるが故に。
「レギオンに入らないかい?」
「え?」
待ってくれ、話が早すぎるだろ。
「勿論すぐにじゃあないよ。無理でしょう。その体じゃあね」
そういうと彼女はいきなり顔を近づけて言った。
「でも私は君が欲しい。」
一瞬ドキッとしてしまった。いや一瞬じゃ無い。バクバクいってる。やばい。
「君は文字通り“死ぬ気”でブラストに立ち向かって真力を自力で解放させた。」
「精神的にも肉体的にも、真力の素質もあるわけだ!」
長い三つ編みが触れる。しかしそんなことも気にせずに彼女は語った。
「まあ……無理矢理にとは言わない。考えてくれ。」
そう言って彼女は病室を後にした。
「そんなの……入るに決まってるだろ。」
決意に満ちた声が、病室に響いた。
————————
半年後
「将徒、退院おめでとう!」
奇跡とも言える回復力で、俺は医療センターを退院した。
「……学校は。」
だが現実はそんなに甘くは無い。
ブラスト襲撃事件により俺たちが通っていた高校の半数が死亡、その他大勢も今も入院しているらしい。そしてそれは教師も、その他スタッフも変わらないそうだ。
だが本編のシナリオではもっと多く死んだ。というか、主人公達を除いて殆ど死んだ。生き残った主人公は異獣に復讐するためにレギオンの訓練学園に入るのだ。
それはこの状況でも同じで、東雲達はレギオン訓練学園に入るようだった。
真力は女性の方が体内に保有する量が多く、また解放訓練の期間も短い。
まあ、そういうゲームだからと言ったらおしまいだが、訓練学園は女子生徒がかなり多い。
そして出会うヒロインも一気に増える。生徒だけじゃない。異獣ハンターもだ。
ヒロインだけじゃなく異獣とも出会うハメにはなるが……。
不安6割期待4割を胸に抱いて、俺たちはこの学園に入学した。
———
四人だけの入学式を早々に終えた俺たちは教室に入る。
「やっぱりどこも綺麗だな、レギオン校ってのは」
嬉しそうに東雲はつぶやいた。
前にあった時よりも髪を少し整え、身なりも前よりもかなり垢抜けていた。
訓練校のクラスメイトはというと……やはりみんな可愛い。
実力重視の校風だからか、制服等も自由で、もはや全然関係ない私服で登校する者もいる。そしてその私服も可愛い。エロ可愛い。
男子のクラスメイトも少ないが残念ながらそれなりにイケメンも多い。
くそー。
……ん? なんで俺はこんなこと考えてるんだ?
生前は、女子に興味津々な訳がなかった筈だ。どうして……?
この肉体に転生してから、人格に影響を及ぼしているのか……?
俺は、向井将徒だ。それは紛れもない真実だ。
でも俺は同時に、高岸……。
あれ……?
下の名前、なんだっけ……?
段々と視界がぐらつく、耳に知らない声が聞こえる。
『思い出せ……!お前はあの時……!』
鳴り響く警笛。眩く輝く前照灯。そして衝撃——。
『死んだんだろ……! 高岸威……!』
「……ッッ!」
そうだ、思い出した。俺は、転生したんだ。
「どうしたんだ将徒……? お前死んだみたいに顔色悪いぞ。」
東雲が話しかけてくる。
「ちょっとな……病み上がりだよ」
気を引き締め直さないとな。
ちょっとでも隙を見せると、シナリオは——。
簡単に俺を地獄に堕とすだろう。
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