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母の静江と伯母の君子は性格や考え方が全く合わず、仲が良いとは言えないだろう。そのため、以前は電話をかけたりするような交流はほぼ無かった。私も十五年は伯母に会っていないように思う。
現在は、私からすると祖父と祖母、伯母と母からすれば父と母になるが、その二人の介護問題が唯一、この姉妹を結び付けたのだった。
看護師だった伯母の君子は、祖父母の家から電車で二駅くらいの距離に住んでいる。彼女の二人の子供はすでに家を出ており、ご主人もかなり理解のある人らしい。
それで、伯母はわりと時間を気にせず、自由に行動できるそうだ。看護師だった時の知識を活かしつつ、高齢者のデイサービス等を利用しながら、年の多い祖父母の世話をしてくれている。
本音を言えば、祖父母がここまで長く生きられるとは誰も思っていなかった。ここまで長寿であるのは、祖父母が自らの家に住み続けられ、伯母が一生懸命、今まで世話してくれているおかげだろう。
一方で、私の母である静江は、夫の仕事の都合で祖父母の家からは離れた県外に住んでいた。それは、私の生まれる前からのことだった。
静江は君子と性格がまったく違うが、両親とも合わなかったらしい。
君子はよく勉強ができた。好きなだけ勉強して進学し、様々な資格を取得した。その中の一つが看護師である。だが、静江は共働きの両親に代わり、家事のほとんどをこなしていた。さらに、両親にはお金の問題がいつもついて回り、姉妹は散々苦しめられてきたという。
そういう事情もあって、静江には思うところがたくさんあった。それに、やはり祖父母二人を介護するのは大変だから、どこか受け入れてくれる施設を探そうと提案したことも過去にあった。けれど、君子はそれを突っぱねた。
君子は進学させてもらい、たくさんの資格を取らせてもらったことを非常に恩に感じ、そうであるから祖父母への愛情は強い。その上、自分が看護師であるという自負はもっと強いものだった。
つまり、君子は自らのやり方で、君子の思う最も良い環境で祖父母の世話をしたいというのが大前提であって、静江が何か言ったところで全く聞く耳は持っていないのだ。
君子がやりたいようにやってくれればいい。ただ、君子から何か相談されれば、ちゃんと協力する気持ちはあるし、正直、年老いた二人の姿を目の当たりにするのが怖いの。私は薄情かしら……と小さな弱い声で、母は私に言ったことがあった。
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