やまない槍と皆の様子
仲仁へび(旧:離久)
第1話
魔法弾がとうとう弾切れを起こしたようだ。
轟音がなりやんだ。
だから俺達は隠れていた場所から出る。
今が撤退時だった。
再装填までに距離をかせがなければ。
生きるために、走り続ける。
火でやけこげた戦場にあぶられながら、走り続ける。
この戦いは俺達の意思ではじめたわけじゃないのに。
命をかけなければならないのが、酷く腹立たしい。
「槍が来るぞ」
敵が特殊な機械で槍を飛ばしたらしい。
見上げれば、弓矢より凶悪なものが空一面に見えた。
死の雨がふってこようとしている。
「はしれーーーーっ!」
ここは戦場。
一秒先には命を落とす。
生きながら地獄が見える、そんな場所。
怪我をした人間を抱えて逃げる暇がない。
「いかないでくれ!」
「おいてかないで!」
耳をふさぐひまもない。
心の中で謝りながら、必死で走る。
兵士達は、命を大事にかかえながら、命を粗末に扱う。
戦場は、そんな矛盾が堂々としている場所。
上司も部下も関係ない。
死ぬ時は死んで、生きる時は生きる。それだけだ。
善人も悪人も関係ない。
ただの偶然で死んでしまい、ただの偶然で生き残るだけ。
空から何かが降ってくる。
多くの武器が降ってくる。
人を殺す武器が。あの世が見える。
目を凝らす前に、かけぬけろ。
ここにいる皆、何人が、一体どれほど生き残れるだろう。
それは生き残ってみないと分からない。
はしる自分達の目の前には、真っ赤な炎。
どこまで燃え広がっているのか分からない。
けれど、躊躇するようなものは、ここまで生き残ってはきていない。
魔法弾で焼け焦げた火の海にとびこんでいった。
普通の火ならとっくに消えているのに。
魔法の火は長く残る。
「つっこめ!」
みんな、飛び込んでいく。
死に物狂いの様子で。
その先に炎の終わりがあって、再び走り続ける事ができるよう、願いながら。
やまない槍と皆の様子 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
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