7話 どうなってるんだ
「どういうことだ……。マジでどうなってんだよこれは……」
妹を犯そうとする兄(俺に妹はいない)認定され、若々しい母親(俺の母親はもう50近い)に寝ぼけてないで早く学校へ行けと家を追い出された道すがら。
俺は動揺とショックのあまり、独り言を止められずに歩いていた。
ゲームの中の世界のはずなのに、揺れている木々や葉々は青々としていて、現実とまるで遜色ない。
本当にどうなってる。
死んだはずの俺は、なんであのカタオモイアイの主人公である大峰祐志になってるんだ。
「だって俺……死んだはずだよな……? あのカップルをなんでか守ってしまって……それで……」
自らの手を見つめながら呟き、ふとすぐそこにあった駄菓子屋のガラス戸を見やる。
そこには、まさにあのカタオモイアイの主人公、大峰祐志が立っている。表情も俺の今の心境をそのまま表してる動揺した顔だ。
「今更だけど……まさか、夢か何かとかか……? 確かにこのゲームには色々思い入れがあったし、絵空ちゃんを寝取られルートから回避させるために何百時間とプレイするほど必死にはなってたが……」
おもむろに頬をつねってみる。痛い。
じゃあ、これは夢でもないみたいだ。
「でも、そもそも大峰祐志に妹なんていない。だから俺は自分の姿が変わってることに気付くまで、ここがどこなのかもわからなかった。何ルートもエンドシナリオまで持って行ったけど、それだけは確かだ……」
なんて独り言をブツブツと突っ立ったまま続けてると、背後から「ゴホン!」とわざとらしく咳払いする声が聞こえてくる。
振り返れば、そこには怪訝そうに見つめてくるおじさんの姿。
マズい。明らかに俺を不審者扱いしてきてる……。
すぐさまペコペコと頭を軽く下げつつ、学校へと足を速めた。
無論、その学校の場所も道中人に尋ねながら、歩く制服姿の奴についていきながら、と完全に手探りではあったが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます