4話 NTRの道へ……

 放課後を迎え、俺は信二に宣言した通りすぐさまダッシュで教室を出る。


 信二と俺はクラスが別だ。たまたま運よく俺のクラスのホームルームが早めに終わり、自由の身になった。あとはもう、盗人のごとく……じゃないけど、速攻で家に帰って件のエロゲ、カタオモイアイをプレイするのみ。


 信二は俺からこのゲームを回収するだのなんだの息まいてたが、そうはいかん。


 俺は絵空ちゃんにガチ恋してしまったのだ。こうなれば、満足するまでこの子とイチャコラし、ひたすらにNTR要素モリモリっぽそうな本編を回避して幸せなひと時を楽しむのみ。


 攻略Wikiによると、絵空ちゃんに告白した時点で本編が始まってしまうらしいからな。それだけを回避しとけば、こんなのはただの純愛ゲーだろ。ふっ、エロゲオタを舐めるな。バッドエンドに対する嗅覚はピカイチよ。


 余裕余裕と鼻唄交じりに息を荒らげながら走り、今日も今日とて家に到着。


 俺は玄関で雑に靴を脱ぎ、階段を駆け上がってすぐに自室へ入り、PCの電源を付けた。


 生き返ったような感覚だ。


 帰りの道中、決死の思いで走る俺がそんなに目に余るのか、通りすがったJKにやけにキモいとでも言いたげな視線をぶつけられたり、近所のおば様方には奇異の視線をいただいたりした。現実は残酷である。町内で必死に走っただけでどうしてそんな目で見られなければならないのか。ちょっと鼻唄のボリュームが大きかったかも、とは思ったりするけどさ。


 ったく、やっぱり三次元はクソだな。愛するのは二次元のみよ。


 少々苛立ちながらも、カチカチとマウスをクリックしていき、オープニング、タイトル、セーブデータ選択を決定させ、絵空ちゃんとようやくご対面だ。


 彼女……いや、絵空は今日も可愛かった。


「……ぬふふ。今日も可愛いね、絵空ちゃん♡」


 思わずこんな独り言が漏れ出てしまうレベルだが……今のはさすがにキモかったな。これはいくらなんでもわかる。キモかったって自覚あります。でもここは自室だし、一人の空間だからいいよね! オールオッケーだよね!


『うんっ。私は全然構わないよ。将吾くんが傍にいてくれるなら、何でもいいの』


「ほぉら見ろ! 絵空ちゃん本人がそう言ってくれたぞ! いいよねぇ! 自分の部屋なんだし、何したってぇ!」


『いいよ。……なんなら、恥ずかしいところも……全部見て欲しいくらいっていうか……あ、私何言ってるんだろ! い、今の無し! しょ、将吾くん、聞かなかったことにして! あ、あはは……!』


「き、きき、聞かなかったことぉ!? そ、そそそ、そんなのできないよ絵空ちゃん! 俺の耳はしっかりキャッチしてしまったよ! は、はは、恥ずかしいところってのは……ズバリどこかな……? な、なーんて! ナハハハ!」


 こんなのガチ恋しないわけがない。何この奇跡的な会話被り。もう二次元と三次元の枠組みを飛び越えて、運命の赤い糸でつながり合ってるだろ、俺たち。


 確信めいた思いを抱き、若干キメ顔で頷いてみせる。


 その瞬間に画面が暗転し、俺の顔面がPCのモニターに映り込んだのはここだけの話だ。おい、マジでやめろこれ。一気に現実に引き戻されるだろうが。こんなキモフェイス男と絵空ちゃんが釣り合うわけないか、とか一瞬ガッカリしちゃうだろうが。


「ふぅ……。しかし、やっぱ絵空ちゃんが可愛いのはガチだな……」


 ゲーム開始早々から絵空ちゃんが可愛すぎて困った。


 この勢いだと、いつか間違って先っぽだけ……みたいなことになってもおかしくない。そうなればゲームエンドだ。


 シナリオは完全にNTRフェイズへと突入。そこから先は地獄が広がるのみだ。絶対に告白イベントが起きても断らなければならない。


「……けどなぁ……そうなれば無限ループだし……」


 椅子に最大限もたれかかって腕組みし、天井を見上げながら考えるポーズ。


 そうなのだ。俺の今やってる部分は、要するに物語で言うプロローグ部分をルート別に楽しんでるだけ。もちろんデートはしてて、そのパリエーションもプロローグだというのに多いってのがこのゲームの凄い点であり、傑作と言われてるだけあるな、と個人的に感じるところなのだが……。


 率直に言って、プロローグはどこまで行ってもプロローグ。


 告白し、付き合わない限り、絵空ちゃんとの深いやり取りは見ることができない。


 でも、何度も言ってるが、告白してしまえばそれこそこのイチャラブ展開は終わりだ。


 どうする……? どうするんだ、俺……?


「やってしまう……のか? 結局……?」


 懊悩した。悩みに悩んだ。


 で、悩んでると、気付けば時は過ぎていた。


 母さんが家に帰ってき、父さんも帰って来る。


 そこまで来るとさすがにエロゲの画面はいったん閉じたけど、夕飯を食べてる時、風呂に入ってる時、俺はそのことについて考えまくった。


 そして、導き出された答え。それは――


「……よし。告白……してみよう」


 まさかの告白ルート。NTRの待つ本編へ。


 が、しかしだ。俺にも勝算が無かったわけではない。


 おかしな展開になってきたタイミングで電源を落とし、一つ前のセーブポイントに戻るのだ。そうすると、大事故には至らないかもしれない。


 それに、攻略Wikiいわく、このNTRエロゲには、NTR展開を脱する一つの抜け道があるそうなのだ。


 ただ、具体的にはそれが何なのかは書いてなかった。ガセの可能性も全然あるけど……進まない後悔よりも進む後悔だ。


 俺は勇気を振り絞り、本編へと向かうのだった。









〇●〇●〇●【追記】〇●〇●〇●


 おはこんばんちは! 作者のせせらぎです!

 ここまでお読みいただきありがとうございます! そして謝らせてください! 転生するまでが長くてすみません! とw

 本当にごめんなさい。そこんとこは自覚があるのです。丁寧に描写しようという思いが先行して、結果長々とした話になっていくというのが作者の悪癖でございまして……。

 しかし、何にせよ予告ということで、次のお話でプロローグ部分はラストになる予定です。この作品の中の主人公も【カタオモイアイ】の本編へ向かう決心をしましたが、作者も同じです。次回を終えて本編へ移ります! 時間がある時にでも、テキトーに読んでやってください! では!


 あ、あともう一つ! 感想欄はどうぞなんでもご自由にお使いくださいね! 展開希望とか、こうなればいいのになぁ……とか、そのままそっくり飲むことは厳しいかもですが、作者の思いとか、返信としてつぶやいたりしちゃうので!w

 基本、私の感想欄は私以外の誰かを中傷するようなもの以外はほぼ何でも受け付けます! ですので、なんでもどうぞです! 改めまして、せせらぎからでした!

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