第7話 初めての

ミリングに購入されてから二週間が経過した。その間に血液の採取と部屋の掃除を繰り返していたアルトは一冊の魔法の書物を発見した。それは索敵魔法を記したもので今のアルトには役に立たないとも感じていたが、念のため読んでみると意外にもはまってしまったのである。それで索敵魔法を一週間でマスターしてしまった。


それを見ていたミリングはおかしいと感じていた。いくら才能があっても魔法書を一週間でマスターしてしまうことは常識外であるのだ。ましてやそれを成し遂げたのは才能なしの烙印を押されたものであるという。少し早いがミリングはアルトを解剖して細かく検査することにした。


その日、夕食をとったアルトは異様な眠さを我慢できずにそのまま眠ってしまう。



目が覚めると、そこには今となっては懐かしい天井が見えた。立ち上がってみると地面に足をつけている感覚がある。頬をつねってみると痛みがあり、これが夢ではないことを実感させた。だが文字や計算といったことは覚えており、あれが夢ではないこともまた実感させられる。何がなんだが分からないが日課をこなすべく行動することにした。


そんなこんなで一週間が経ち、町で鑑定の儀を行うこととなった。町はそれほど大きくはないため儀式を受ける子供は五人だ。そのうちの一人、兄の婚約者の弟であるシャイドが話しかけてくる。


「なあ、アルト。この鑑定の儀の結果が農家以外だったらどうするんだ?」


アルトはこの会話に覚えがあった。そして、この結果で自分が無能であることが判明し、町から逃亡することも。とりあえず返事を待っているシャイドに話しかける。


「とりあえずは村を三つ超えた先にある街で冒険者になろうと考えている」


「冒険者って荒事の仕事だろ。剣術の練習でもそこそこって言われているアルトに冒険者なんてなれるのか?」


「他に道なんて考えられないし、そうするしかないだろ」


そんな話をしているとシャイドの出番となり、シャイドは農業の才能があることが公表される。


ここまで、あの夢のような出来事と全く同じ展開なことにアルトは疑問を持ったが、いまさら鑑定の儀をせずに逃げることはできない。次は自分の出番のため壇上に登り神官の鑑定を受ける。


「彼に才能は有りません。結果はなしです」


それを聞き周りの人々は静まり返ったが、次の瞬間大きな笑い声が響き渡った。


アルトは二度目の出来事のため、それほど動揺することはなかった。とりあえず前回とは違う行動をとることに決め、家に帰ってみることにした。

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