第4話 奴隷

村長の仕事とは、村の税の計算などの書類仕事が主だった。文字も書けず計算もできないアルトには仕事の手伝いなどできなかったが、村長はそんなアルトに計算を教えてくれた。三日も経つと簡単な足し算、引き算はできるようになりその部分の仕事を任せられるようになった。


次の日には村を出て、隣村に向かおうと思って就寝したアルトだったが首に何かをつけられた音で起き上がった。そこには村長がおり、隣には見覚えのない男が立っていた。嫌な予感を感じたアルトはここから逃げ出そうとしたが村長の隣に立つ男の声に反応してしまう。


「動くな」


その一言でアルトは走り出したからだが急に止まり地面に倒れこんでしまう。何事かと思ったアルトだったが男が丁寧にも状況を説明してくれた。


「その首につけた首輪は、奴隷の首輪といってなぁ。つけると契約した主人の言うことに逆らえなくなる代物なのさ。これでお前は奴隷落ちだ」


アルトは奴隷になるくらいであれば死を選ぼうとし、舌を噛み切ろうとしたが。


「自害を禁ずる」という男の言葉で自殺することすらできなかった。そこへ村長が男へと話しかける。


「こやつは簡単な計算であればできる。自頭は良いから文字も教え込めばすぐ覚えるじゃろう。それでいくらで買い取ってくれるのじゃ」


その言葉に男はにやりと笑いながら、簡単な問題を出しアルトに答えるように命令した。計算はすべて正解していた。最後に才能についてしゃべるようにアルトに命令をした。


「私に才能はありません」


そう答えると村長の顔色が変わる。男の態度も急変し、村長へ質問する。


「これはどういうことだ?」


「確かにこの子供は鑑定の儀でよくない結果が出たため街にでて冒険者にでもなると言っていました。しかし、才能がないなどとは一切聞いていませんでした」


村長は早口で答えた。男は「まあいい」と言って村長に銀貨一枚を渡しアルトについてくるように命令した。村長は値上げの交渉をしたがっていたが男は無視して村長の家を出た。こうしてアルトは奴隷に落ちることとなったのだ。村の外には馬車が止まっており、中にはアルトと同じ首輪をつけられた子供が五人いた。男はアルトに「勝手に話すことを禁止する」と命令すると馬車の中に押し込んだ。


次の日の朝、馬車は出発し自分が来た町とは反対の方角へ進んでいった。その間に男はアルトと他の奴隷に文字を教えていた。どうやら奴隷としての価値を上げるためにそうしているようだ。


二日おき程で村に寄り人数を増やしながら馬車は街の方角へ進んでいった。そして七日後アルトは目指していた街にたどり着くこととなった。

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