第2話 鑑定の儀

俺の名前はアルト。農民の家に生まれた次男で10歳になる。そこそこ大きな畑を所有しているが畑は長男が継ぐことになっているため、今は畑の一角を借りて農業の練習をしている。ほかにも町の狩人のおじさんに罠の仕掛け方を教わったり、自警団の人に剣を教わったりして、いつ家を放り出されてもいいように準備をしている最中だ。兄以外には兄弟はおらず、両親は兄弟分け隔てなく愛情を注いでくれるいい親だが町の風習に逆らうこともなく畑は兄にすべて継がせることを決断した。一応温情としては、一週間後に受けることになる鑑定の儀で農業に関する才能があればうちの畑の一角を預けてもらえることとなっている。


兄のライナスは12歳で鑑定の儀では農業という結果が出た。両親も鑑定の儀の結果は農業だ。兄は隣の家の農家の娘と結婚が決まっており、町で一番の農地の広い農家となることが決まっていた。農地は広いが人が足りないため、両親は農業の才能のある人間を探して回っている最中なのだ。


そんなこんなで一週間が経ち、町で鑑定の儀を行うこととなった。町はそれほど大きくはないため儀式を受ける子供は五人だ。そのうちの一人、兄の婚約者の弟であるシャイドが話しかけてくる。


「なあ、アルト。この鑑定の儀の結果が農家以外だったらどうするんだ?」


「とりあえずは村を三つ超えた先にある街で冒険者になろうと考えている」


「冒険者って荒事の仕事だろ。剣術の練習でもそこそこって言われているアルトに冒険者なんてなれるのか?」


「他に道なんて考えられないし、そうするしかないだろ」


そんな話をしていると次はシャイドの出番となり、鑑定の儀を受けに行ってしまった。ちなみに鑑定の儀の結果は公表され、特に珍しい才能が芽生えたものはその職業につけるように町長が面倒を見てくれるらしい。


その時シャイドの鑑定が終わったようで。

「彼の才能は農業です」

と宣言された。戻ってきたシャイドは鼻をかきながら。


「これで食べるのに苦労せずに済むぜ」

なんて言っている。そして次はアルトが呼ばれた。アルトは壇上を上がって神官の鑑定を受けながら自分も農家の才能を授かり、畑仕事をしながら一生を過ごすのだろうなと考えていた。すると、神官が驚いた顔をしながら何度も結果を確認し、小さな声で結果を宣言した。


「彼に才能はありません。結果はなしです」


それを聞いて周りの人々は静まり返ったが、次の瞬間大きな笑い声が響き渡った。


「才能がないなんて始めて聞いたぞ」

「あいつどうやってこれから生きていくんだ?」

「この町から無能が出てくるなんてとんだ恥さらしだな」


そんな言葉を投げかけられながらアルトは壇上を下りる。いつもの癖でシャイドの横に向かうがそんなアルトに無情な言葉が投げかけられる。


「近寄るなよ。無能が。無能が移ったらどうするんだ?」


その言葉を聞いてアルトは町を出るために駆け出した。どうせ親のところに行っても同じ扱いを受けることが目に見えていたからだ。そうしてアルトは産まれた町を出ることとなった。

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