幸せになりたくて
るいす
第1話 巻き込まれ転生
「おらー。バスが出発するぞー。席に座れー」
私の名前は宗広 弥(むねひろ ひさし)。しがない高校の教師だ。今私は二年三組の修学旅行のためバスに乗っている。この日のために日誌の作成や予定の調整などでくたくたになりながらも無事にこの日を迎えることができた幸福感に満ち足りている新任の教師26歳だ。
そんなことを考えつつ生徒たちを着席させ、自分も席に座ったことでバスが出発し、バスガイドさんが話を始めた。みんな周りの景色を見ながら山道を走っていると急にバスが傾き始めバスは崖から転落した。
目が覚めるとそこは真っ白な空間で私とバスの運転手、バスガイドの女性の三名だけが閉じ込められていた。三人で状況を確認し、バスが崖から転落したことで話がまとまった時に三人の後ろから声をかけられる。そこには美しい女性が立っており、私たちの話が終わったことを確認すると話しかけてきた。
「どうやら話は終わったようですね。私はパルヒナ。異世界の転移、転生を司る神です。バスの事故は私の世界で勇者召喚を行ったことで子供達を呼び寄せるために起こった現象です。それで勇者召喚では未成年しか呼び寄せることができないためあなた達は取り残されて死んでしまいました。それではあなた方が不憫だと感じたため、私があなた方を私たちの世界に転生させることとしました。こちらの世界の不手際で死なせてしまったため一人につき一つまで願いをかなえたいと思います。ちなみにこの異世界は魔物も存在している剣と魔法の世界ですよ」
パルヒナの言葉を聞いてバスの運転手は盛り上がっていた。
「本当に願いをかなえてくれるのだな。それならチートをくれ。そうだな、相手の能力を奪えるチートがいい」
それを聞いてパルヒナは、
「いいですよ。しかし、転生させる際にここで起きたことは忘れてしまいます。前世の記憶も残りません。それでもその願いでよろしいでしょうか?」
「それだとチートがもらえたことにも気づかないのではないのか?」
バスの運転手がパルヒナに質問する。
「こちらの世界には、10歳の頃に自分の素質を見抜く鑑定の儀というものがあります。その時にその能力について理解できるかと」
「なら俺はそれで頼む」
バスの運転手の願いは決まったようだ。するとパルヒナは両手を植えに掲げ。
「では、彼の新たなる人生に幸あらんことを」
そういうとバスの運転手の姿は消えてしまった。その光景を見て私とバスガイドの女性は驚いてしまったがパルヒナが私たちに声をかける。
「彼は転生しました。そのためこの場からいなくなっただけです。次はどちらの願いを決めましょうか?」
すると、バスガイドの女性が手をあげ、こう答えた。
「誰もが振り向くような美貌が欲しいです」
「確かにそれならばこの場の記憶がなくなったとしても問題ありませんね。しかし、産まれてくる家を選ぶことはできませんよ。それでもかまいませんか?」
「はい。これでお願いします」
そう言うとパルヒナはバスの運転手を転生させた時と同じことを繰り返しバスガイドの女性を転生させた。
「最後はあなたですよ。願いは何でしょうか?」
「その前に一つ質問してもよろしいでしょうか?」
「どうぞ」
「では勇者召喚された生徒たちは無事なのでしょうか?」
「あなた方の境遇と比べると無事であるとは言えます。しかし、召喚された者たちは魔王との戦闘に駆り出されるでしょう。しかし、あなた達とは違い召喚されたものには複数の能力が与えられます。それに気にしたところであなたの記憶には生徒たちは残りませんよ」
私はその言葉に衝撃を受けた。未成年の生徒たちがこの世界の住民たちよりもすごい能力を持っていたとしても戦いに参加しないといけないということにだ。
「私の願いでせめて地球への帰還を望む生徒だけでも元に戻すことはできませんか?」
「それは、残念ですができません。私は転移、転生を司る神であり生命の生と死を操作することはできないのです。それに、あなたの願いはあなた自身の願いをかなえるためにあります。他の人に願いを向けることはできません」
「そうですか。私は願いなど特に思い浮かばないのですが・・・」
「それでは目標などはありませんか。このようになりたい。という未来の形などは?それを参考に私があなたの願いをかなえる能力を与えましょう」
私はしばし考えた後、誰もが思い浮かぶが達成が困難な願いが思い浮かんだ。
「私は幸せになりたい。生きていてよかったという最後を迎えたい」
その言葉を聞きパルヒナは満足そうに頷き。
「その願いかなえましょう」そう言って私を転生させた。
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