来世は美少女   作:あなたの部員

 あなたの母親

 息子の様子がおかしい。近頃、変なTシャツを着ている。高校までは温厚で真面目な性格だったはずだ。大学で何かあったのだろうか。新たな分野を冒険しているのだろうか。深夜、二階にいる息子の物音でたびたび起こされる。私の教育がどこかで間違ったのだろうか。放任主義を貫いたのが失敗だったのだろうか。どちらにせよ、息子を変えられるのは私しかいない。あの頃の息子を取り戻す。


 あなたの祖父

 孫の様子がおかしい。近頃、やけに懐いてくる。よほど私の仕事に興味があるようだ。私は小学校で校長をしている。孫は主に二つの質問をする。小学生の様子についての質問と、私の校長業務についての質問だ。おそらく、後者の質問はフェイクだろう。孫の目を見ればすぐにわかる。特に、小学生女児の様子を話すときは、これ以上ないほど目が輝いている。いったいどうしたのだろう。何か変な食べ物でも食べたのだろうか。


 あなたの妹

 兄の様子がおかしい。近頃、やけに私の古着を求めてくる。私は現在中学生である。その私の古着となると、小学生の時の服しかない。いったい何に使うのだろうか。本人曰く、インターネットで売買しているらしい。しかし、私はそうでないことを知っている。兄にあげた服は、一つも売られずに破れてあったからだ。昔を懐かしむ時期でも来たのだろうか。サークルで兄は何をしているのだろう。奇妙なTシャツを着て出かける兄をみながら、私はいつも考える。


 あなた

 自分の様子がおかしい。近頃、強烈に美少女になりたいと感じる。これが私の本能なのだろうか。美少女になりたいという欲求は自然と体にも表れてしまっている。というのも、「来世は美少女」と印字されたTシャツを無意識に来てしまっているのだ。私はこの一か月、美少女に成り上がるためにはどうすればいいか考えてきた。ネットにある方法はどれも試した。一度死ぬために頭を自ら強打したこともある。妹の古着を全部着てみようとしたこともある。しかし、一向に美少女になれない。私は今世、美少女になれないのだろうか。そんな悩みを抱えたまま、私はサークルに参加する。


   ※この物語はフィクションです。実際の人物や団体とは一切関係ありません。





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2022.7.17 九州大学文藝部 三題噺執筆会 九大文芸部 @kyudai-bungei

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