あれ? 私、なんで泣いているだろう?

 泣きながら、霞んで見える世界の中で、自分の二つの手をぼんやりと見ながらつばさは思った。

 そんな風景の中に一つの小さな手が見えた。

 その手はそっと、泣いているつばさの片っぽの手を握った。

 それはひかりちゃんの手だった。

 つばさは顔を上げてひかりちゃんを見た。

 ひかりちゃんは霞む世界の中でにっこりと笑っていた。

「大丈夫だよ。つばさちゃん。みんなつばさちゃんが元気になって、教室に帰ってくることを楽しみにして、待ってるよ」

 とひかりちゃんは言った。

「……うん。ありがとう」

 とつばさは言った。

 そんな風に自分の気持ちを素直に言えたのは、本当に久しぶりのことだったから、つばさはそんなことが自然と言える自分に(内心)とてもびっくりしていた。

 そんなつばさの言葉を聞いてひかりちゃんはにっこりと笑った。

「今日はいいお天気だね。空が真っ青だよ」

 とひかりちゃんは言った。

 つばさがその言葉を聞いて、窓の外を見ると、確かに空は真っ青に晴れていた。(白い雲ひとつ、見えなかった)

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