ササミチーズしそ巻きフライ
「うぃ~ひっく。うまい肴に、ちと酒が進みすぎたの」
「こういうのなんて言うんだっけ、キッチンブレイカー?」
「ブレイカーとな、鍋を爆発させて厨房に風穴開けるぬしのような輩じゃな! ひゃははっ」
「ちがうよね、キッチンドランカーだよね。魔王ちゃんが酔っ払うとお料理進まないから、はい解毒魔法」
「ん~ふぅ……ぬし、酔ったらいつも解毒してしまうのか?」
「まぁ勇者は敵が多いからね。やけに効くお酒だな~と思ったら、毒を盛られてたってこともあるし」
「人族まじ人族じゃの~。魔族を見習え、内輪もめなどせんぞ」
「その余裕、いつまで続くかな」
「なんじゃと!?」
「それより次のお料理は?」
「ぐぬぬ、おのれ勇者……次は主菜じゃな。主菜は肉や魚などタンパク質をメインに据えた、文字通り献立のメイン料理じゃ」
「やったね肉料理。むしろこれだけあればいい。何作るの?」
「主菜だけあればいいなどという考えは、一人暮らしのコンビニ飯くらい間違っておるぞ。次のお題は『ササミチーズしそ巻きフライ』じゃ」
「ささちー? なにそれ」
「知らんのか!?」
「ササミは知ってる、筋肉によく効くお肉だよね」
「ぬしであれば茹でたことくらいあるじゃろ? そして完成品はこちらじゃ。パンにもご飯にも合うゆえ、パンとご飯ちょっとずつなどという贅沢もできるのじゃ」
「おいしそう。配信も盛り上がってるよ」
「いつの間に作ったのかだーれも気にしとらんが、盛り上がりは当然じゃの……ふむふむ、
『食堂のメニューに欲しい』か、考えておこう……む、よく見るとこのID、人族のものじゃ。この国の兵卒ではないか。勇者よ、配信バレておるがよいのか?」
「大丈夫、マズいIDはリアルタイムでブロックしてる。そもそも偉い人たちはこんな生配信見ないよ」
「ぬし、無駄に有能じゃのぅ」
「こんなコメントもあるよ。
『魔王様食べたいレロレロレロ』……慕われてるね、魔王様」
「誰じゃ、これ!? 怖いわっ、ブロックせよ!」
「気を取り直して作っていこう。材料はこれ全部使うの? 葉っぱも?」
「それは大葉、シソの葉じゃ。合法なハーブじゃぞ? レシピをやるから作ってみせよ」
「なになに、まずササミは縦に切り開いて、平らにする……巻くために潰せばいいんだね。このくらいなら手のひらでパチンっと――」
「餃子の皮みたいになったの……」
「そこに葉っぱ――」
「大葉」
「大葉を敷いて、いいチーズを乗せて――」
「それ、われの私物のいいチーズ……」
「プロテイン オンザ プロテインだね。これは追いプロテインはいらないかな」
「よくぞ気付いたの、はじめからいらぬぞ」
「これを手前から巻くんだね……これは、なかなか難しい、けど余計な魔力を、込めない、ように……!」
「待て待て待て! 厨房が、塔が光っておるぞ! 力みすぎじゃ!」
「ふぅ、できた」
「なーにが『ふぅ、できた』じゃ! コメントを見よ、『瀕死の怪我人が回復した』だの『戦死者が生き返った』だの奇跡を連発しおって! 魔族を代表して感謝してくれるわっ」
「まぁ、ボクの手に掛かれば簡単だったよ」
「そう簡単にいくと思うてか! まぁやってみよ」
「気になる言い方だなぁ。小麦粉をまぶして卵液をつけるか……卵は――」
「卵割るのはうまいのぅ」
「毎朝生卵飲むからね。完全栄養食」
「だからの」
「なにさ」
「バランスじゃ! もっといろんなものを食え!」
「はいはい。パン粉も付けたよ。170℃の油って、どうやって温度測るの?」
「菜箸を入れたら大きめの泡が出来る温度だの。われは指で温度測れるがの」
「チートだなぁ。じゃあ火力全開にして、170℃以上にならないように熱耐性を付与すればいいか」
「どっちがチートじゃ!?」
「揚げ物って初めてだけど、なんか楽しいね。2分くらい揚げたら油を切って……あ、両端からチーズが脱走してる……」
「ふっふっふ。じゃから簡単ではないと言ったであろう。大葉はささみからはみ出さぬようにして、巻いたら両端をしっかり閉じることが肝要じゃ」
「計ったな魔王、さすが魔王汚い、魔王卑怯」
「いや、レシピに書いておるじゃろ……」
「まぁでも食べられるし。食べやすい大きさに切ってレタスの上に……レタスってどれ?」
「そっちの葉っぱじゃ」
「ああ、これよく見るね。あとはトマトとキュウリを添えて完成。はい中濃ソース」
「うむ、丸ごとトマトとキュウリの存在感がすごいのぅ。ササチーがつけ合わせに見えるぞ」
「やせちゃうね」
「そんなに心配ならば砂糖水でも飲むがよい」
「魔王ちゃんてボクに辛辣だよね」
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