肉巻き野菜のアヒージョ
「恐ろしいものを見たが次は出汁じゃ。鍋に二番出汁、酒、タケノコを入れて中火にかける。中火じゃぞ!」
「はいはい。二番出汁ってことは一番出汁の劣化版?」
「一番出汁の出汁ガラでとるものじゃが、使い道が違うのじゃ。一番出汁は煮立てず強い香りを出したもので、薄味の料理によい。煮物なら煮びたしに合うの」
「ナスの煮びたしとか聞いたことあるよ」
「野菜も食うがよい。二番出汁はじっくり煮出したもので、香りは弱いが旨味が強いのじゃ。煮込みに向いておるの。ちなみにこれはカツオと昆布の出汁じゃ」
「つまりモツ煮込みには二番出汁だね。味濃い料理に二番出汁、覚えた」
「若竹煮は薄味に仕上げるが、煮立てるゆえ二番出汁にしたのじゃ。ほれ、灰汁を取らぬか」
「この泡、味に影響するの?」
「灰汁は渋みやえぐみを含んでおるゆえ、タケノコの風味を損なうのじゃ。次はしょうゆ、みりん、砂糖、塩を加えて、ひと煮立ちしたら味見せよ」
「わーい」
「タケノコの味見ではない、スープじゃ」
「えー。うーん、おいしいけど物足りないかな。やっぱりお肉入れて濃い味にしない?」
「そこでこれを投入するのじゃ」
「なにそのティーバッグ?」
「カツオ節が入っているのじゃ。これを入れて弱火で30分煮込めば、追い鰹じゃな」
「追い鰹ってお出汁のことなんだ? 海に潜ってカツオを追い回すお祭りがあるのかと思ってた」
「カツオは時速60キロほどで泳ぐのじゃ。ぬしは水棲魔族になるつもりか? タケノコとカツオの風味は至高の組み合わせなのじゃ」
「カツオ節入れたタケノコの煮物もあるよね」
「土佐煮じゃの。あれは濃い味付けでぬしの好みじゃろう」
「ボクは別に濃い味が好きってわけじゃないよ?」
「そうなのか?」
「お肉が好きなんだよ。お酒も好きだよ」
「そうか……では煮込む間に酒のつまみでも作ってやろう。ぬしは鍋を見ておれ」
「わーい。何作るの?」
「野菜がうまい肉料理にしようかの。タケノコの余り、サヤインゲン、ニンジン、玉ねぎ、エリンギ、エノキ、ズッキーニ、おくら、キャベツにブロッコリーの芯も使うか。
野菜は長さ3cm以下に揃える。タケノコ、キャベツ、玉ねぎ、エリンギ、ニンジン、ブロ芯は太めの千切りにするのじゃ」
「ブロ芯」
「ブロ芯じゃ。沸騰させたお湯に塩を入れて、タケノコ、オクラ、サヤインゲン、ニンジン、あとブロ芯をサッと下ゆでしたら水分を拭き取っておくがよい」
「うへー野菜ばっかりでやせちゃう。お肉も使おうよ、聖剣貸してあげるから」
「む……それはちょっと興味あるのじゃ。どれ、この豚バラをスライスしてみるかの」
「ボクが使わないと、ただの頑丈な剣なんだけど」
「なーんじゃ、つまらんの。また子豚が生まれても困るのじゃが。薄切りにした豚バラで野菜を巻いたら塩胡椒をして、スキレットに立てて並べるのじゃ。たくさん作る時はすき焼き鍋でもよいの。
そこにオリーブオイルを流し込み、潰したニンニクと鷹の爪を入れる」
「お、なんかおいしそう」
「あとは弱火でじっくり火を通せば『肉巻き野菜のアヒージョ』じゃ。野菜の水をよく切っておかないと、油が跳ねるぞ」
「ニンニクの香りがお酒に合いそう。ワインでも飲んじゃう?」
「酒はこれにしようかの」
「麦焼酎?」
「これをこのシュワシュワで割ると――」
「炭酸ね」
「麦のポン菓子のような香ばしさ、アヒージョにも合うのじゃ!」
「あ、おいしい」
「さて、鍋もよい頃合いじゃろ。カツオ節を取り出してワカメを入れるがよい。そのまま3分煮たら『若竹煮』の完成じゃ。自然に冷ませば味もしみるじゃろ」
「うーん、いい匂い。こいつに肉が入ってないのが残念」
「われはワカメがピンクなのが残念じゃよ……」
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