平安時代、姫様のお屋敷に仕え、日々虫取りに励む少年のお話。
平安時代の、身分違いの片思いを描いた恋愛もの……には違いないんですけど、実質半分くらいはホラーっぽい印象の物語です。
伊達に「残酷描写有り」「暴力描写有り」の注意書きはついてません。ヒエェ怖い……。
とても美しい虫好きのお姫様。
わざわざ虫取りのためだけに主人公を雇うほどで、しかしそんなたくさん捕まえて一体どうしているのか、と思ったら……というお話。
この『橘の姫』の美しさが好きです。
描写というか、説得力というか、主人公がそれを見て綺麗だと感じる、その感覚が文章から伝わるところ。
ただ見目が麗しいだけでなく、彼女の「ある種普通でない振る舞い」がそう見せる部分もあったりして、そういう意味ではすっかり主人公に同調させられてしまいました。
フェティッシュ、というよりは、たぶん業のような何かを描いた物語。
幸せとは何かをつい考えてしまう作品でした。