第14話 味方

 玄関を開けた途端に、俺は飛び上がりそうになった。


 ぴい、というフルートのような音色。


 ドアの前にぽつんと朝日を浴びて、あの野鳥が入った鳥カゴが置かれていた。


「あのバカ……ひょっとしてさっきまで俺んちの前にいたのか?」


 独りごちて、俺は小さなカゴの中の鳥を見やる。


 丁寧に折り畳まれた翼は、一部羽毛が乱れてはいるが、動きづらそうには見えない。


 あのときの怪我はすっかり完治しているようだ。


 素人ではここまで治療は出来ないだろう。


 ということは、ユウはわざわざ獣医の所まで出向いたということか。


 鳥カゴも新品、水も餌も充分な量が入っている。


 何が食料だよあいつ。


「お前、ここから出たいか? 俺、ひょっとして無事には戻れないかもしれないから。飼ってやれる保障は出来ないんだ」


 語りかけると、野鳥はぴいぴいと嬉しそうに鳴いた。


 よし分かった、と俺はカゴの入り口を開けてやる。どこにでも好きな場所に行くといい。


 だが、ぴい、と一鳴きしたそいつは、俺の肩に停まって盛んにぴいぴい鳴き出した。


 急げ、と行っているような。


 思いこみかもしれないが、そう聞こえた。


「お前もあいつを追いかけたいか? 一応恩人だろうしな」


 ぴぴい、とそいつが鳴く。


「急ごう、幹」と幻聴が聞こえる。


 たかが名前も無い鳥の分際で、奇妙なほどに頼りになる。

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