第12話 荒涼な夢

 陰鬱とした気分だった。


 A県内陸のじめじめとした空気が、肌にまとわりついてくる。季節の割に肌寒くもある。


 ユウと別れて家に帰った俺はまだ咳の止まらない叔父の看病をしてから、早めに床に就くことにした。


 ひどく疲れていた。


「ユウちゃんは、今日は来ないのかい?」


 無邪気に訊いてくる叔父に、俺は苦笑いで返すしか無かった。



 毛布を被って浅い眠りに落ちた俺は、不思議な夢を見た。


 荒廃した、あらゆる建築物が砂に埋もれている、俺の町。


 かろうじてそうだと分かるのは、荒れ地にぽつんとある石碑や、森の中に高くそびえる大樹に見覚えがあるからだ。


 大地はひび割れ、空を氷霧のハリケーンが覆い、人々が嘆き悲しみながら彷徨する。


 その中にたたずむ、金色の少女と――


 その傍らで少女を庇うように立つ、小柄だが精悍な体躯の少年。


 二人は苦悩に満ちた眼差しを人々に向けながら、荒れた世界を進んでいく。


 その先には荒れた大地しか無いというのに、少年は迷わず少女の手を引いて先導する。


 少年の目に宿る希望の光は、幹がよく知る者と同じ光だった。


 俺には関係が無い。二人に叫ぶ。


 俺は関係無いんだ。反応は無い。



 未来は答えない。

 

 未来は変えられない。


 全てが見えているのに何も出来ない。


 こんな――こんな世界をずっと夢に見るなんて。


 とてもじゃないが耐えられない。


 夢の中で、俺はひたすらに逃げ場を探した。

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