第37話

 さて、僕が冴姫さんと絵美里との同棲が決まってからかなりの日数が経過した。


 僕と二人との仲は相変わらず良好で良すぎるくらいだ。


 絵美里は相変わらずの甘えん坊で僕を四六時中抱きしめて離そうとしないし、冴姫さんも同じように僕にくっついて離れない。


 そんなイチャイチャとした日々を送っているわけれだけれど、来週には僕たちの間を一歩前進させるだろうイベントがある。


 それは、冴姫さんの誕生日だ。


 絵美里と僕は、冴姫さんを祝うために密かに準備をしている真っ最中だ。誕生日パーティは僕の家でしようということに成っているので飾りつけとか料理とかプレゼントを用意しようとしているところ。


 冴姫さんにそれとなく食べたいものを聞いてみた所、僕の料理ならば何でも大好きだと嬉しいけれど、困る反応をされてしまった。


 期待に答えられるように、精一杯色々作りたいなって思うけれど、正直、僕がどんな下手な料理を出しても冴姫さんは喜んで食べるだろうなって想像できてしまう。


 他の人や自分にはめちゃくちゃ厳しいけれど、僕にはものすごく甘いから卵かけご飯とかでも褒めてくれるだろうな。


 まぁ、そんなわけで絵美里と二人だけで買い物に来ているわけだ。


 ちなむと絵美里の誕生日も冴姫さんと近いからまた、すぐに誕生日会を開くことに成るだろうけれど、今は冴姫さんの誕生日だ。


「んふふ、これってデートってやつだよね?」

「そうだね。何だかんだ、いつも絵美里が僕の家に来て二人でダラダラ過ごすのが日課になってから、これが初デートになるのかな?」


 そういえば、冴姫さんともデートはしていないような気がする。休日も一緒に居るって言うのに家でイチャイチャしているだけなような。


 冴姫さんは映画を見るのが好きみたいだから、今度誘ってみようかな。


「それにしても、冴姫って何が好きなんだろう?」

「僕も良く分かっていないんだよね」

「でも、冴姫なら何でも喜んでくれそうだけれど」

「それはそうだと思うけれど、ちゃんと考えて思いの籠った物を渡さなきゃ」

「そうだね」


 ショッピングモールをグルグルと回っていろいろ探し回ってみるけれど、良いものが浮かばない。


「そう言えば、前に冴姫さんにぬいぐるみを渡したとき、喜んでくれたっけ」

「そうなの?」

「うん」


 あの時はまだ、絵美里は冴姫さんと接点は何もない状態だったから知らないのも当然だ。


 冴姫さんはあの僕があげた人形といつも一緒に寝ているみたいで、ぬいぐるみに名前を付けて可愛がるくらいには気に入っているみたいだ。


 あの凛々しい冴姫さんが人形相手にデレデレしているところは少し見てみたい気持ちがあるけれど、それは将来同棲をすれば見ることが出来るかもしれない。


 それは一旦置いておくとして、プレゼントにあのゲームセンターで取ったぬいぐるみより大きな抱き心地が良い物を渡せばさらに喜んでくれるんじゃないか?


「じゃー、晴夏からの冴姫へのプレゼントは大きいぬいぐるみで決まりなのね?」

「うん。絵美里はどうするの?」

「ん?私はもう決まっているから、時間も空いてるしぬいぐるみ買ったらゲームセンター行こうよ」

「え?もう決まってたんだ。分かった、それじゃあぬいぐるみ買ったらゲーセン行くか」


 絵美里は、冴姫さんへ何をプレゼントするのんだろう?


 そう思って聞いてみたけれど、「秘密」と可愛く言われてしまってそれ以上聞くことはできなかった。


 ただ、僕にも関係があるものだよと謎のヒントをくれた。


 冴姫さんの誕生日なのに僕にも関係があるって何だろうとは思ったけれど、結局正解にたどり着くことはできなかった。

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