お客様三人目 ~桜のボランティア 第八話~
大変なことがあったボランティア初回だったが、帰ってからぐったりと座り込んでしまった。
身体から力が抜けたような・・・・普段はあちこち歩くことはあっても何か農作業のようなことは家でもしてこなかったのでそのせいかと思われた。
「つっかれたぁぁ~」
ごろんと床に寝ころぶと、落ちていた桜のボランティアのチラシが目の前にあった。
手に取り仰向けになってチラシを眺める。
自分だけしかいないと変な使命感に燃えていたが、そんなことはなかった。
妙な正義漢に燃えてい他自分が恥ずかしい。
実際に作業する人が沢山いるようだし、所詮ボランティアだから来月は行かなくても支障はないだろう。
だけど・・・
「咲いたらきれいなんだろうな~」
そういつつ、今日もらった謝礼があったこと寝そべったまま、カバンから謝礼の袋を取り出し、和田さんももらった桜のしおりを取り出し眺めてみる。
桜の花びらと花が和紙に貼り付けられており、端には綺麗なピンク色のリボンが結ばれていて手作りの良さを感じさせる。
「来月も行ってみようか~」
おばあさんも大変そうだし、桜が咲いている姿をこの目で見るまでボランティアを続けてみようかなぁと思っているうちにそのまま眠りに落ちて行った・・・。
それから翌月、私はまたボランティアに参加することにした。
和田さんがどうなったかも気になったし、一回で音を上げたと思われるのが何となく悔しかったからだ。
前回寝坊してしまった失敗を教訓に、今回は九時には起きておばあさんの桜田家に向かう。
今日は遅刻しなかったぞ・・・。
桜田のおばあさんの家に到着すると、加藤さんもちょうど着いたところだった。
「あら、ヨシノちゃん!今日も来たのね!」
いつの間にかチャン付けになっていることに驚いたが、覚えていてくれたことが嬉しくてニッコリとあいさつをする。
「おはようございます、加藤さん。あの、和田さんは今日は・・・」
「和田さんね、まだ入院しているのよ・・・だから今日は不参加なの。」
「まだ入院してるんですか!軽くはないと思ってましたが、そんなに重傷だったんですね・・・」
「そうなの、枝が直撃したみたいで、脳に大きなダメージがあったみたい。
ケガの様子はもういいみたいなんだけど、意識がもうろうとしてるみたいでね、
うわごとで『桜・・・すいません』みたいなことを言ってるみたい。」
「桜?・・・おばあさんに言ったことを後悔してるんでしょうか・・。
・・・・早く良くなるといいですね」
「後悔だなんて!和田さんはそんなことしないわ~あはは!
桜様のバチが当たったのよ!」
加藤さんはカラカラと笑った。
・・・・・バチ?
聞こうと思ったところで、桜田のおばあさんが家から出てきた。
「おはようございます、今日も来てくださってありがとう。
吉野さんも加藤さんも・・・嬉しいわ。
よろしくお願いしますね。」
ニコニコと桜田のおばあさんは嬉しそうに私たちを庭に案内してくれた。
それから先月と同じメンバが揃い、その日は穏やかに桜の手入れをして難なく作業を終えた。
その日の謝礼はまた桜の封筒に桜茶が入っていた。
学校に行ってる時とは違う人間関係の出会いと感謝されることに私は満足していた。
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