お客様三人目 ~桜のボランティア 第三話~

 庭に通されると、敷地内ぎりぎりまでそびえる桜の木に目を奪われた。

生えているというより、そびえ立つと言った方が正しいだろう。

植物の事には詳しくないが、樹齢百年は優に超えるだろう。

「わー」

お世辞ではない感嘆の声が口から出る。

おばあさんは、

「すごいでしょう、見事よねぇ本当に・・・」

「本当にすごいですね、今は時期がずれてますけど、春はもっと見事なんでしょうね」

「そうなのよ、本当に咲く姿は

本当にそれはそれは・・・

この世のものではないような

美しさなのよ」

本当にという言葉を何度も繰り返しながら、うっとりとするような表情のおばあさんに、言われて咲き誇る桜を想像してみる。

きっと咲いた姿はもっと見事なのだろう。

「どうぞ、もっとよく見て行ってくださいな」

おばあさんに言われて近くによって桜の木を見てみる。


立派な幹は両手を回しても届かない。

上を見上げれば枝ぶりは見事なもので、どこまでも続くかのような太い幹が空一杯に広がっている。

ただし、伸びすぎた枝はおばあさんの家の上の方までかかる感じで伸びており、落ちた葉が沢山屋根におちて朽ちている。

両隣にも家の庭にも小枝と葉が多く落ちていて、桜は見事だがこれは少し迷惑だと思う。

「・・・これはお手入れが大変ですね。」

思わず出た言葉に、待ってましたと言った感じで、

「そうなの、お手入れが大変でねぇ・・・お世話を手伝ってくれる人を探してるんだけど、なかなか見つからなくて・・・・」

「・・・そうなんですねー・・・」

上手く乗せられたなという気持ちがしてなんと返事をしていいかわからないまま、

少し気まずい時間が流れる。

耐えきれなくなって、

「あの、毎日は無理ですけどたまになら・・・私もお手伝いしましょうか?」

「まぁ!本当に!?嬉しいわぁ!ありがとうありがとう!」

おばあさんは私の手をぎゅっと握って何度もお礼を言った。

成り行きとはいえ、誰かの手助けになるのは悪くない気持ちだったし、おばあさんが喜んでくれて素直に嬉しかった。

「あのね、それで手伝って欲しいことはね・・・」

とおばあさんが説明を始めようとしたところで、講義の一環でここに来ていることを思い出した。

「す、すいません!学校に戻らないとならないので、週末にでもまた来ます。

お話はその時に・・・」

話を遮る形でおばあさんにあわあわと事情を説明する。

「そうねそうね、私もうれしくってつい、ごめんなさいね。

じゃ、日曜日なんてどうかしら?」

「わかりました、また日曜に来ますね。すいません、失礼します。」

おばあさんはにこにこと手を振って見送ってくれた。


バタバタと支度をしてみんなのところに戻ったのは集合時間のギリギリだった。

危ないところだった。

学校に戻る際、遠くに見える桜を眺めて少しだけ週末が楽しみになった。











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