お客様三人目 ~桜のボランティア 第一話~
最近、ポストに入ってくるチラシにはうんざりしている。
朝早くから夜遅くまで無限に毎日入ってくるチラシを片付けながら、イライラをぶつけるように一枚をビリっと破いてみる。
大学に入ってこのボロアパートで独り暮らしをして半年以上経った。
最初こそ楽しくチラシを眺めていたが、こう毎日入ってくるとあっという間に憂鬱のタネになった。
ピザ、寿司、弁当、塾、マッサージ、エステ、不動産、水道工事・・・・などなど。
まだ自分が使う可能性があるようなものならまだマシだ。
ピザや寿司はまだ役に立つ可能性がある。
マッサージやエステも使う可能性がある・・・と言いたいけどお金がないのでなかなか手が出ない。
だけど、”あなたはだまされている!”だとか”神の声はもうすぐ・・・”などなどのよくわからない主張を書いてあるものに関してはもはや興味を通り越してちょっとしたホラーだ。だれかこんなものを読むんだろうか・・・とすら思う。
不要なチラシを器用に折って田舎の祖母みたいに卓上ゴミ箱にしてみたが、圧倒的にゴミ箱の方がどんどん増えてくるので、あっという間にこれらのチラシは再生紙送りにすることにした。
「今日も沢山入ってるなぁ・・・」
チラシと郵便物に仕分けしながら、重ねてみる。
比率は郵便物とチラシで1:9だ。
「チラシの勝ち~」
アパートで独りごとを言いながらチラシに軍配を上げる。
やっと片づけて、袋に入れてゴロゴロしようと思っていると、
カタッ
玄関の方からチラシが入る音がした。
イライラしてドアの向こういるであろう配達員に向かって
「今片づけたばっかりなんですけどぉ!」
と大声を出すけどシーンとしている。
あるのは、玄関に落ちたチラシだけだ。
「はぁ~だる~」
このイライラをぶつけることができなまま、放り込まれたチラシを拾う。
「私をイラつかせたチラシはどんな奴だ・・・」
そうブチブチ言いながらチラシを見てみると
『急募!桜のお世話ボランティア
年齢・経験問わず。多少の謝礼アリ』
筆で描いたのだろうか?大きな桜が紙いっぱいに描かれたチラシに目を奪われる。
朱色と黒の二色刷りのチラシは何故だかわからないけど、目を惹かれる何かがあるような気がした。
『連絡先:〇〇市▽▽町〇-〇ー〇
桜田 ミヨ
電話番号:〇〇〇ー〇〇ー〇〇-〇〇〇〇』
今時、メールアドレスもQRコードもないチラシ。
「へー。桜のお世話ねー。達筆ぅー。
こんなの応募する人なんているのかなー」
すっとタッピツチラシを捨てる方に放り込んで、お菓子の袋を手に取ってベッドに寝ころんだ。
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