お客様二人目 ~がっこう 第七話~

 冬休み目前になってもN君は学校に来なかった。

別に彼が心配だとか、気になっていとかそういう訳ではない。

ただ、どんな風に更生して登校してくるのかすこし気になっていただけだ。


彼の行方は、この後すぐにわかることになる。


二学期最後の終業式、冬休みに向けての生活指導ということで、

生活指導の先生の授業があった。

先生は大柄でいかにも体育会系と言った見た目だ。

沢山の書類と大きなパネルを持って、教室に入ってくる。

先生が教壇に立つだけで、ピリリと教室の空気が張り詰める。


冬休みにハメをはずしすぎないこと、バイトをしないこと、飲酒、タバコなどもってのほかだということを大声でもはや威嚇するように説いてきた。

僕は、今先生が言ったことのどれにも当てはまる行動をするつもりがないので、

半分聞いていなかった。

ただ座って聞き流していると先生はなおも続ける

「いいか?学校生活に慣れてくると、生活態度も乱れてくる奴がいる。

オレの話だけだとイメージが付かないだろうから、

これからこれを使って説明する!いいかよく見るように!!」


バン!と黒板に額に入った大きなパネル・・・というよりは立派な額に入った絵画が掛けられる。

そこに描かれているのは・・・・

N君だった。


着崩した制服、中途半端に伸ばしてセットした髪、じゃらじゃらとチェーンをぶら下げ、かかとを履きつぶした指定靴。

まさしくN君がそこに描かれていた。

ただ、ツンとして反抗的ないつものN君ではなく、表情が泣きそうな、いや泣いているのではないだろうか。

物悲しそうな表情を浮かべてこちらを見つめている。


クラスメイトはどっと笑いに包まれ、先生もわっはっはっはと笑った。

僕は笑えなかった。

ドキっとして、なんだかよくわらかないけど背中がゾクっとした。

「これが悪い見本だ、いやー見れば見るほどいい見本だな~」

先生はバンバンと絵の中のN君の肩の辺りを叩いた。


悲しそうな顔が一瞬、歪んだように見えた。

僕は先生の話より、N君から目が離せなかった。

ただの額に入った絵だ。絵のはずなのに・・・


「・・・おい、聞いてるのか!!』

先生の声と後ろの席から背中を突っつかれて気が付く。

どうやら当てられていたらしい。

「は、はい!!」

「・・・なんだよ、聞いてなかったのか・・・?お前もNみたいになっちまうぞ?はっはっは!!」

どっとクラスがまた笑いに包まれる。


僕はどうしてもなぜか笑えなかった。








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