お客様二人目 ~がっこう 第六話~

 それから一か月ほどたってクリスマスが近づいたある日。

部活を終えて一人で帰ろうとしていると、学校の玄関前で生徒指導の先生と生徒の親だろうか。母親らしき人はペコペコと先生に頭を下げている。

大声で話しをしているので、別に盗み聞ぎしようと思っているワケではないのだが話が耳に入ってくる。


「いや、N君は立派にやっていますよ」

「・・・先生のおかげです、うちの子がこんなにしっかり真面目になっているなんて・・・」

「いやいや、彼の努力あってこそ、型にはまってしっかりやっています。」

「ありがとうございます・・ほんとに・・うぅぅ」

「泣かないでください、お母さん」

「あの、また会わせていただくことはできますでしょうか?」

「もちろんです、いつでも顔を見に来てやってください」


・・・N君?

N君って、学校に来なくなった、うちのクラスのN君だろうか。

学校を辞めた訳ではないのだろうか。

真面目に?顔を見に来てやってくれ?

どういうことだ?


不真面目極まりないので退学になったのではないのか?

この学校に寮はない。

だから、会いにくるというのはどこに会いにくるというのだろうか・・・。

聞こえた限りの情報であれこれ考えごとをしていると、

生徒指導の先生が、僕に気付いて声をかけてくる。

「お、部活帰りか、もう校門を閉める時間になる。急いで出るように。

気を付けて帰りなさい。」

「は、はい、さようなら」

ハッとして頭をペコっと下げると、母親らしき人が僕に向かって頭を下げた。


もしかして、どこか生徒指導の先生が紹介した下宿先に引っ越したのかもしれない。

そこで、何らかの出会いなり指導なりでN君は今真面目になろうとしているのかもしれない。

そう思うことにして、僕は校門を慌てて出て帰宅するのだった。



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