お客様一人目 ~イモ太 第八話~

 それから二日経ったが、私は何だかんだイモ太を食べることができずにいた。

イモ太は体を切られたり、皮をむかれたり、煮られたりすると人間と同じように死んでしまうらしい。

身体の一部でも痛いから切られるのもごめんだと言う。

そこからまた長ったらしい説教じみた話を延々と繰り返してくる。


単純にイモ太は死にたくはないし、痛い思いもしたくないので料理はしないで欲しいと言う。

私も私で、たかがイモだと思っていたが、何だか本当に気の毒になってきて食べることができないでいた。お母さんにイモ太を渡して

『ポテトサラダにしちゃって』

とも言えないでいた。


このままだとハムスターは飼えない。目標達成には至らない。

イモ太にもこの事情を説明しているが、

「自分を食って犠牲にした後で、ハムスターを愛せるのか!?」と詰め寄られ何も答えを出せずにいた。

私も確かに、イモ太に刃物を向けることも、熱湯に放り込むこともできない。


今日もまた学校から帰って来るなり、イモ太に同じような説教を延々とされてさすがにイライラした。

「じゃぁどうしたらいいっていうのよ!だったらどうしたらいいか、イモ太が答えてくれたらいいじゃない!」

イモ太が叫ぶように私も叫び返してやった。


「・・・」

イモ太の口のような黒い穴が見えなくなるくらい小さくなって、黙ってしまった。


気まずい沈黙。

イモ太は何も言わない。

私も何も言わない。


しーんとした時間に耐えかねて私は口を開いた。

「ねぇ、何か言わないの?」


イモ太はそこから何もしゃべらなくなった。

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