お客様一人目 ~イモ太 第六話~
驚きすぎると声も出てこないらしい。
イモ、いやイモ太が私の手のひらでしゃべり出し、声も出ず思わず手を引っ込めた。
イモ太は私の手からツルっと植木鉢をひっくり返した土の上にボスっと落下した。
「危ないなぁ、ケガするところじゃないか」
と不服そうに口(?)を尖らせて文句を言った。
一体何がどうなっているのかわからない。
目の前でしゃべっているイモがいる。
「あ、ゴめ・・」
と謝りかけるとイモ太が口を挟む。
「ジャガイモが喋って何が悪いっていうんだ?
人だけが喋れると思ってるんだろうなぁ・・・
驚くのが終わったら、さっさと拾ってもらえるとありがたいんだけどね。」
私はイモ太に言われるままに拾い上げ、土を拭ってやった。
手が震えた。膝もガクガクしたけどなんとか平気なフリをした。
「よし、じゃ部屋に行こうか。
まずはどうしてイモ太なんてダサい名前を付けたかそこから聞きたいんだよ。」
イモ太はそんな私を知ってか知らずか、とても生意気だった。
ベランダから部屋に戻ると、お母さんが私ににこにこしながら見に来た。
「どう?取れた?見せて見せて~」
覗きこんでくる。
「お母さん!このイモしゃべるんだよ!」
私は目見開いてお母さんに見せつけてやった。
「こんにちわ」
イモ太は挨拶をした。
「あら、喋ってるのね~でも一個なのね~
うーん、少なかったなぁ。
でも、育てたことには変わらないわね!
70点ってとこかな!
よし、じゃこの後はなんの料理にするか考えておいてね~」
嬉しいのか、がっかりしたのかよくわからない反応をして、お母さんはまた台所へ消えた。
ジャガイモが喋ることは珍しいことじゃないんだろうか?
お母さんはすごいのか、鈍感なのかよくわからなくなってきた・・。
これがおかしいことなのかそうじゃないのか・・・。
よくわからなくなった私を見て、イモ太が大きな震える声で怒鳴った。
「料理だって!?お、お、おまえたち俺を食おうっていうのか!?」
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