お客様一人目 ~イモ太 第三話~
イモを植えるのは大変だった。
ベランダに出ると、春なのにムっとする熱気がダルさを増す。
そこには土、植木鉢、スコップ、肥料、プレートがおいてあった。
大きめの植木鉢に、大きな土の袋をよいしょと持ち上げ、ドサドサと土を入れる。
どれくらいの量がいいのか、どうしたらいいのかサッパリわからないので適当に入れ、肥料も適当に間に入れた。
鉢の八分目くらいまで土を入れ終わると、スコップでほじくって真ん中に穴を掘る。
めったにやらない作業にただこれだけでヘトヘトだった。
土の袋の後ろ側にたまたまジャガイモの植え方が書いてあったので、それを読みながらイモをそっと穴に置く。
上からそっと土をかぶせ、じょうろで水をやった。
これでいいのかな。
植木鉢に何を植えたかわかるように、私はプレートに
”イモ太”
と書いて鉢の端っこにグサっと刺した。
生き物っぽいし、なんとなくジャガイモじゃかっこ悪い気がしたから。
刺し終わると、立ち上がって身体のドロをパンパンと払って、私はベランダのドアを閉めて手を洗うために洗面所へ向かった。
手を洗って着替えるために部屋へ戻って、そのまま借りたマンガを読むことにした。
お母さんが片付けなさい!と怒鳴っていたけど、聞こえない、知らない、寝たフリをした。
その日からイモ太を育てる生活が始まったワケだけど、わくわくもドキドキもしなかった。
面倒なお手伝いを一つなんとなくこなした、そんな感じだった。
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