お客様一人目 ~イモ太 第ニ話~

 植物を育てることになって、次なる課題は何を育てるか・・・・という話になった。

お母さんは私がその気になったのを見て、にやにやした。


花、多肉、野菜、たくさんあるみたいだけど、私は流行っている多肉植物がいいと言った。

友達が多肉の寄せ植えを部屋に飾っていて、とっても可愛らしかったのを覚えているからだ。

オシャレで、いかにも女子って感じがするし。


「育ったか育たないかよくわからないからダメ。あなたが育てるのはコレ。」


お母さんはそう言って、私に一つのジャガイモを渡した。

何だよ、最初からダメなんじゃん。

・・・・しかもイモって。

かっこ悪いんだけど。えー、育てる前からガッカリした。


「これを育てて、収穫して家族で食べることができたら、

習い事でも動物でもなんでもヨシとしましょう。」

お母さんはそう言って私にイモを渡して、ベランダの庭に用意した園芸道具を案内すると、さっさと台所へ去っていった。


ちょっと楽しそうかもと思ったけど、イモを渡されて急にめんどくさくなった。

お母さんは、絶対に家の食費を安く抑えたいからそんなこと言ってるんだろうな・・・とも思った。

最近はイモが高いだの、玉ネギがありえない値段だの、ブツブツ文句ばかり言ってるのを覚えてるし。


何はともあれ、私は目標ハムスターのため大きく伸びをしてから立ち上がりめんどくさそうにベランダに向かった。

あれ、欲しかったのって、トイプートルだっけ。








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