第16話 ”K”

小雨から大雨に変わった夜、

綾の携帯がメールの受信を告げていた。


正直、メールを開く気分ではなかった綾だったが、

無意識に携帯の受信ネームを見ていた。

相手は“人間さん”

慌ててメールを開いて確認する綾…


「約束の時間を変更したい。14時を16時に変更出来る?K」

「な~んだ、良かった」

心からホッとした。

約束がキャンセルされる予感しかしなかったから。

綾は、OKですとだけ打ってメールを返信した。


って言うか…タイミング!!


どうしていつも何かある度に人間さんからメールが来るの?

綾は、最初にメールを受信したときのようにキョロキョロと部屋を見まわした。

隠しカメラでもあるのかな?それとも盗聴器?

そう思うくらいのタイミングの良さ!

でも、そうなると圭吾と別れた夜の時は??

益々謎は深まるばかりだった。


あれ??

待って、どういうこと?


ふと、綾は違和感に気が付いてメールを再び開いた。

「約束の時間を変更したい。14時を16時に変更出来る?K」


「約束の時間を変更したい。14時を16時に変更出来る?K」


“K”?


今までのメールを読み返したけど、そんなイニシャル的なものは無かった。


どういうことなの?

どうして“K”なんて書いてるの?

何が伝えたいの?

何を言いたいの?



K…

K…K…

イニシャル?

何かの暗号?

何となく文面からしてイニシャルっぽいけどなぁ…


綾はメールで聞くことにした。


「“K”ってどういう意味ですか」


お陰でさっきまでの絶望感が消えたのは、

正直、ありがたいと思った。

いつもタイミングがいい…。


しかし、

何時間待っても、人間さんからの返事は来なかった。

予想通りだったので、あまり落胆はしなかったが。。


綾は寝る前のベッドの中で考えていた。


「人間さんって毎回、助けてくれる…。いったいどんな人なんだろう…」


まるで分らない…


「もう、謎ばかり」


綾はまるで迷宮(ラビリンス)に迷い込んだような気分になっていた…。

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